2023年08月18日 1785号

【第4分科会/自治体DXとどう闘うか】

 政府が「デジタル社会の実現」を国家政策に掲げる中、地方では「自治体DX(デジタルトランスフォーメーション)」の嵐が吹き荒れている。7月30日に行われたZENKO第4分科会では、自治体DXの狙いが「公共部門を大企業に開放し、儲けの対象にする」ことであることを確認し、公共の破壊を許さない闘いの方向性を議論した。

 基調報告を行ったのは、4月の統一地方選挙で初当選を果たした大津市議の中川てつやさん。岸田政権が掲げる「デジタル田園都市国家構想」に触れ、「デジタル化を魔法の杖のように宣伝している」と、皮肉を込めて批判する。

 デジタル田園都市国家構想は、人口減少・少子高齢化、過疎化、産業空洞化といった地方の課題を「デジタルの力」で解決するというもの。政府は交付金をテコに地方自治体にデジタル実装を競わせている。これはマイナンバーカードの普及作戦と一体のもので、普及率が低い自治体は交付金の申請すらできない。

 どのような事業が進められているのか。各地の事例をみると、基本的な計画は企業が作成し、運営するという共通点がある。会津若松市のスマートシティ事業のように、外資系コンサルタント企業が事業展開の中核を担う事例もある。

 この場合、企業が立てた計画に市民や議会は基本的に関われない。行政はお墨付きを与え、事業費を払う存在だけになる。中川さんは「公的責任の放棄であり、地方自治の縮小を招く」と厳しく批判した。

 また、東京・足立区の土屋のりこ区議は、同区で進む窓口業務のデジタル化(担当人員の削減)は利用できない層の切り捨てをもたらすものだと指摘。「人が人に対応する窓口サービスの拡充」を訴えた。

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