2023年09月01日 1786号

【ウクライナ平和主義者をゼレンスキー政権が弾圧/戦争反対は犯罪ではない】

 ウクライナ国内から「戦争反対」の声をあげているユリー・シェリアジェンコさんは8月3日、ウクライナ公安局(SBU、大統領直結の諜報機関)の家宅捜査を受け、パソコン、携帯電話などを押収された。15日にはキーウ(キエフ)のソロミャンスキー地方裁判所から「10月11日までの自宅軟禁、午後10時から翌朝6時まで外出禁止」などを命じられた(https://wri-irg.org)。

 ロシア侵略に反対し、ウクライナの人権侵害に反対するユリーさん。「良心的兵役拒否の権利」の主張や「ウクライナと世界平和のためのアジェンダ」(2022年9月21日)で、即時停戦、和平交渉を提言したことが「ロシア侵略を正当化した」罪に問われた。ウクライナ当局は昨年来、ユリーさんを監視下に置き、弾圧の機会をうかがっていた。

非暴力を罪に問う

 強制捜査のあった当日、ユリーさんは捜査を指揮したと思われるSBUノヴァク調査官へ抗議文を出している(平和団体「WORLD BEYOND WAR(戦争のない世界)」のウェブサイトに掲載)。また、家宅捜査の数日後、米ウェブ報道番組「デモクラシー・ナウ!」のインタビューに答えている。

 ユリ―さんの抗議文にはこうある。「私個人、『ウクライナ平和主義運動』や平和運動の正当な人権活動全般に対する妨害活動をやめてください。平和主義者は、プーチンの犯罪的な軍国主義やウクライナに対する残忍な侵略を含むあらゆる人権侵害、戦争、軍国主義を批判し、非暴力による抵抗を行っている。私は、ロシアの侵略の犠牲者であるだけでなく、ウクライナ国家の抑圧的な軍国主義マシーン、特に特殊部隊の犠牲者と感じている」

 家宅捜査では、「ロシア侵略を正当化する」証拠は何も見つからなかった。ロシアの侵略を非難しているのだから当然だ。要するに、非暴力を主張していることがウクライナ政府には気に入らないのだ。

 インタビューでロシアとの戦争はどう終わるとみているかと聞かれたユリーさん。答えは、「ウクライナやロシア、世界中の人々が自分たちの社会を暴力的統治ではないものへ変革する必要性を切実に思い、あらゆる場所で、現在の暴力構造が、より進んだ非暴力で民主主義的な統治へと置き換えられることを夢見ている」。

腐敗隠しの弾圧

 ウクライナ政府はなぜ今、ユリーさんを弾圧したのか。ゼレンスキー政権が求心力低下をおそれたからだ。市民には総動員を強要しながら、政権幹部が私腹を肥やす事態が頻発している。

 ゼレンスキー大統領は8月11日、各州の徴兵責任者である軍事委員会のトップをすべて解任した。賄賂を受け取り、徴兵逃れを見逃していた。ロシアとの攻防が続く南部オデッサ州の責任者は賄賂を資金にスペインに別荘を購入していた。徴兵をめぐる汚職は112件が捜査中だという。

 欧米からの支援兵器さえ横流しのうわさが絶えない。これまで国会議員や閣僚などが相次いで辞任あるいは解任されている。

 政権維持のために、戦争継続に固執するゼレンスキー政権だが、軍事支援・戦闘継続が犠牲者を積み上げるばかりでなく、汚職の温床であることが明らかになればなるほど、非暴力による占領反対の主張が一層影響力を持ってくる。即時停戦・和平交渉の声を世界中からあげる世界行動ウィーク(9月30日〜10月8日)。一刻も早くユリーさんの解放を実現しなければない。平和主義者、戦争反対は犯罪ではない。ウクライナ政府、大使館へユリーさん即時解放の声を集中しよう。ウクライナに軍事支援を行い、戦争継続をあおる日本政府に抗議しよう。

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 ユリー・シェリアジェンコさんはキーウ大学で法学修士、調停・紛争管理修士号を取得。弁護士。ウクライナ平和主義運動事務局長。

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