2023年09月01日 1786号

【使用済み核燃料「中間貯蔵」施設/原発延命につながる建設許すな/山口県上関町】

 関西電力と中国電力は8月2日、原発から出る使用済み核燃料の「中間貯蔵施設」設置に向けた調査を山口県上関町に申し入れた。西哲夫・上関(かみのせき)町長は18日、受け入れを表明した。

 中間貯蔵施設とは、使用済み核燃料を「再処理」されるまでの間、一時的に保管する施設のことだ。「再処理」された使用済み核燃料の一部は再び核燃料として使われ、残りは高レベル放射性廃棄物となる。だが、原発推進側のそのような説明とは裏腹に、青森県六ヶ所村の使用済み核燃料再処理施設は1997年の完成予定がすでに26回も延期。完成のめどは立たない。

 2016年には、再処理施設と並んで核燃料サイクル政策の中心とされた高速増殖炉「もんじゅ」の廃炉が決まっている。


原発計画のある町で

 唐突にも思える今回の申し入れだが、上関町にはもともと中国電力の原発建設計画があった。1982年、瀬戸内海に浮かぶ「長島」の突端に原発を建設する計画が発表されると、対岸の祝島(いわいじま)を中心に激しい反対運動が繰り広げられた。反対住民らは祝島沖に船を出し、時には工事を実力で阻止することもあった。

 中国電力は、山口県漁協に補償金を支払うのと引き替えに、地元漁民が持つ漁業権を取り上げようとした。県漁協は補償金を受け取り漁業権放棄に同意したが、祝島漁協は1億8千万円に上る補償金の受け取りを拒否し続ける。

 計画発表から41年。この間行われた上関町長選、町議選はすべて原発推進派が勝っている。しかし、中国電力は現在も原発の本体工事には着手できていない。

核燃サイクルの破綻

 六ヶ所村の再処理施設が完成しないことで、関電管内にある3原発の使用済み核燃料保管場所が尽きつつある。この問題の発端だ。

 関電は2021年、森本孝社長(当時)が杉本達治福井県知事と会談。「使用済み核燃料の搬出先候補地を2023年末までに示す」「達成されない場合は関電管内の原発を停止させる」とみずから退路を断つ「決意」を示し、県に了承された経緯がある。

 電気事業連合会が、現状では日本で唯一である青森県むつ市の中間貯蔵施設を全国の電力会社で共同利用する案を発表すると、関電はこの施設の使用をむつ市に申し入れた。だが、宮下宗一郎むつ市長(当時)が拒否し頓挫。宮下市長が、今年4月の青森県知事選に出馬し当選したことで、青森県内への使用済み核燃料搬入は困難な見通しだ。

 一方、「サヨナラ原発福井ネットワーク」が7月28日に行った福井県との交渉で驚くべき事実が明らかになった。関電が、管内3原発の稼働をこのまま続けた場合、使用済み燃料プールが満杯になるまで美浜原発が6・6年、大飯原発が5・8年。高浜原発に至っては4・6年しか残されていないというのだ。しかもこれらは、事故などの非常事態に備えて残しておくことが義務づけられている「1炉心分」を使い切ってしまう「違法運転」を前提とした数字である。1炉心分の空き容量を確保した場合、美浜6・4年、大飯5・1年、高浜は3・8年で使用済み燃料プールが満杯となることも判明した。

 焦りを深める関電は、使用済み核燃料の一部の再処理をフランスに委託することでごまかそうとしたが、これで「処理」できる使用済み核燃料は全体のわずか5%で解決にはほど遠い。

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建設阻止で原発停止

 岸田政権は昨年、福島原発事故などなかったかのように原発回帰方針を決定。今年の通常国会では、老朽原発の稼働期間の無原則延長、原発新増設に加え、原発による電力供給を「国の責務」とする原子力基本法の改悪まで強行した。

 だが、上関ひとつ見ても原発新増設などとうていできない。市民の反対を押し切って再稼働が強行された日本一の老朽原発・高浜も、違法運転を前提としても4年半後には燃料プールが満杯となる。原発を停止に追い込むには、祝島の闘いに連帯し、中間貯蔵施設を作らせないことが重要だ。

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