2023年09月01日 1786号

【DSAが初めて見た基地の島 沖縄(下)/“命の水”を守る闘いを全国に/PFAS問題でも国際連帯に期待が広がる】

 ZHAP(ZENKO辺野古反基地プロジェクト)をともに取り組むDSA(アメリカ民主主義的社会主義者)のジェラルド・ダルボンさんが訪れた沖縄。米軍基地由来のPFAS(有機フッ素化合物)により、沖縄の飲料水や農作物、水産物の汚染は深刻である。PFAS問題に取り組む市民は、ダルボンさんとの交流で国際連帯への確信を深めた。(M)


「コロナより基地が怖い」

 7月26日、普天間基地を一望する嘉数(かかず)高台で、玉元一恵さん(「普天間米軍基地から爆音をなくす訴訟団」事務局長)は、爆音≠ニは異なる被害をダルボンさんに語った。

 2020年4月10日、基地からPFAS(ピーファス)を含む泡消火剤が流出する事故が起こった。基地内で自動消火装置が反応し、発生したPFASの泡は空を舞い、風に吹かれて子どもたちや市民が集う公園、住宅の屋根、花壇の花木(かぼく)、学校の校庭、園児が乗るブランコなどの遊具へと飛び散った。

 「湧き水が豊富で、いつも多くの子どもたちの元気な声が溢れていた若竹公園。グッピーや亀が棲(す)む池から溢れた水は、ビオトープを流れ近くの海へと流れ込んでいました。けれど、PFAS流出事故以降、危険対策のために池の水は止められ、子どもたちが遊ぶ姿を見ることはできなくなりました」と、玉元さんは悔しそうに語る。

 宜野湾市民10万人のうち5%が原告となっている「普天間米軍基地から爆音をなくす訴訟団」。未成年者や多くの子育て世代が参加している。「コロナより普天間基地が怖いから訴訟団に参加しました」。子どもたちが育つ環境を守りたい―そんな若い世代の思いが伝わる。普天間基地撤去の闘いが若い世代にも広がっている理由だ。

日米市民の連携が希望

 ダルボンさんにPFAS闘争の現状を伝えた高橋年男さん。「有機フッ素化合物(PFAS)汚染から市民の生命を守る連絡会」事務局長を務める。高橋さんは、DSAの働きかけで、アレクサンドリア・オカシオコルテス下院議員がアメリカ連邦議会に修正案を提出したことなどの成果を知った。「ジェラルド・ダルボンさんたちDSAが、アメリカ本国で声を上げてくれているのは、本当に心強い」と語る。

 後日、改めて高橋さんにPFAS問題の進展を聞いた。

 「宜野湾(ぎのわん)ちゅら水会」の代表が7月17〜21日、国連の先住民族の権利に関する専門家機構の会合に参加。沖縄の米軍基地から派生するPFAS汚染の解決を求めて報告した。「国連は調査団を派遣して、継続的に沖縄で起きていることを精査し、日米政府に提言することを期待したい」

 9月16日には、PFAS汚染が進む米国の現状をジャーナリストのジョン・ミッチェルさんが報告する会を持つ。

 PFAS問題は沖縄だけの問題ではない。米軍横田基地のある東京・多摩の住民の血中濃度平均値は他の地域の2・4倍だった。

 これまでPFASについて、暫定的な目標値しか示していなかった日本政府が、今秋には規制値を定める動きがある。しかしそれは、これまでの暫定値よりも2倍も緩いWHOの暫定ガイドライン値を採用する可能性が高い。

 高橋さんは「東京都の多摩地区の人びとをはじめ、全国一斉に国会要請行動に取り組むことや、統一署名の話も挙がっています。日本中の世論を喚起して、国民の声を高めていかないといけないと考えています」と全国的な闘いを見据えている。「一緒に沖縄の命(ぬち)ぬ水(みじ)を守っていきたい」と語った。

すべての基地撤去へ

 帰国後、すぐに開催されたDSA大会の会場に、ダルボンさんが持ち帰った沖縄からの激励品が並んだ。国際委員会の分科会で訪沖報告を行ったところ「国際委員会への登録者が100人以上も増えた」という。沖縄の闘いがDSAの中に一層広がったのだ。初めて見た基地の島沖縄。ダルボンさんは闘いへのエネルギーをいっぱい詰め込んだに違いない。

 DSAはPFAS問題に取り組む人たちにも希望を与えた。これを力にPFASから命を守る基準や制度を、日本の市民の闘いで実現することが重要だ。(終)



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