2023年09月08日 1787号

【汚染水海洋放出 差し止めを/漁業関係者ら 9月8日提訴へ/福島をどこまで愚弄するのか】

 福島原発汚染水の海洋放出差し止めを求めて漁業関係者・原発事故被害者らが9月8日、国と東京電力を相手取り福島地裁に提訴する。原告予定者と弁護団が8月23日、いわき市内で記者会見し、発表した。

 訴状案によると、国に対して「ALPS(多核種除去設備)処理水の海洋放出時の実施計画認可処分、使用前検査合格処分の取り消し」を、東電に対して「汚染水を海洋放出しないこと」を請求する。放出の根本的違法性として「汚染者負担の原則に反する」「住民の平穏生活権を侵害し、漁業者の生存基盤を破壊する」「(産業廃棄物の海洋投棄を禁じた)ロンドン条約議定書に違反する」「国連海洋法条約の海洋環境に関する予防原則に違反する」等を挙げている。

 さらに「東電自ら『関係者』に行った約束を反故(ほご)にする背信行為」「IAEA報告によっては放出を正当化できない」と断じ、原告が有する「漁業権、人格権、平穏生活権」に基づいて差し止め判決を求めている。

 原告になる予定の7人がマイクをとり、「強引なやり方はウソをついてでも反則を平気で行う無法者に等しい」「海洋放出は復興を進めるどころか復興を遅らせるさまざまな困難を生じさせる」「人間の健康を損なわないというデータは見たことがない」「福島をどこまで愚弄するんだと怒りでいっぱいだ」「民主主義のかけらも感じられない。未来の世代にツケを回してはならない」と提訴の決意を語った。

海はゴミ捨て場ではない

 河合弘之弁護士は「不要不急の放流であり、国と東電による二重の加害だ。これを見過ごすことはできないという切実な思いで原告は立ち上がった」と述べ、「海はゴミ捨て場ではない。世界中の人たちの共有財産だ。そこに液体ゴミを捨てる。海洋投棄の非倫理性・犯罪性をきちんと訴えていく」と語気を強めた。

 海渡雄一弁護士は「原告らは最初は重大な過失によって、2回目は故意によって二重の被害を受ける」と強調し、「汚染水にはトリチウムだけでなくセシウム134・137、ストロンチウム90、ヨウ素129、炭素14等が含まれる。それらの健康や生態系への影響はどこでも評価されておらず、安全性は確認されていない。この点が実質的に最も重要な法的ポイントだ」と指摘した。

 提訴は9月8日午後1時30分、福島地裁。原告団100人以上をめざす。

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