2023年09月08日 1787号

【みるよむ(664)7月22日配信 計画倒れの政府の住宅政策 「登録フォーム」はまるでネット詐欺】

 イラクでは深刻化する住宅不足に対し、政府が貧困者向けの住宅分配政策を打ち出した。しかし、その実態はどうか。2023年5月、サナテレビはこの問題を取り上げて報告した。

 カディミ前首相は「マイホーム・イニシアチブ」と銘打った市民向けの大規模住宅建設構想をぶち上げた。イラクでも不動産価格は異常なほど高騰し、住宅危機が深刻だ。貧困層向けの住宅建設が実現すれば、確かに画期的なものとなる。

 カディミ前政権は、ネット上に登録フォームを立ち上げた。市民から「住宅が手に入った」との声が多数寄せられたと宣伝されたが、現実には、ネット上で住宅を手に入れる登録が受け付けられただけだった。肝心の公式の書類はついに市民には届けられなかった。

 スダーニ現政権のスポークスマンは「前首相の『マイホーム・イニシアチブ』は紙の上のインク≠ノ過ぎなかったために中止された」と表明した。まるでネット詐欺ではないか。

 スダーニ首相はイラク各州で市民向けの住宅計画を実現したいとするが、住宅建設のコストが高騰していて実現しそうにない。

口先だけの住宅建設

 若者が失業し、社会保障も切り捨てられ、住居さえ手に入らない。各地で抗議デモが行われ、市民、労働者の闘いが繰り広げられている。政府は市民への懐柔″として口先だけの住宅建設を打ち出したのだ。

 しかし政府の約束は、何の実態もなかった。サナテレビは「ひどい影響を受けるのは、スラムなどでの生活を余儀なくされている市民だ」と鋭く批判している。

 イラクでは、豊富な石油収入がありながら、政府も政治家もグローバル資本の利益と自分たちの汚職のためにしか使おうとしない。深刻な住宅不足にもまともに取り組んでいない。サナテレビはこうした事実を明らかにし、政治を変えようと訴えている。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)

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