2023年09月15日 1788号

【軍事費倍増2年目、24概算要求7兆7千億円/侵略軍めざす統合司令部常設】

 2024年度予算編成に向け、軍事費5年2倍化をめざす防衛省は、7兆7385億円を要求した。今年設置された「防衛力抜本的強化実現推進本部」(本部長防衛大臣)のもとで、新「防衛力整備計画」実現へひた走っている。

 来年度の要求項目は、今年予算化した攻撃ミサイルの開発、量産化や基地強靭(きょうじん)化、イージス・アショアの転用搭載艦建造などを継続。特に「持続性・強靭化」に4兆861億円をかける。航空自衛隊三沢基地(青森県)や陸上自衛隊那覇駐屯地(沖縄県)など11地区の司令部地下化に着手する。弾薬庫は9地区に新設するなど221億円をあて、大量の弾薬貯蔵に備える。

陸・海・空の作戦統合

 重要ポイントの一つにあげられているのが、陸・海・空の3自衛隊を一元的に指揮する「常設統合司令部(仮称)の創設」だ。この方針は、既に昨年末の軍事3文書改定時にうたわれ、来年度、実施に移そうというのだ。

 3自衛隊の統合は06年、統合幕僚監部創設で始まった。統合幕僚長(統幕長)がその責任者になっている。だが、防衛省は「首相を補佐する役割がある統幕長は現場を充分指揮できない」との理屈で、新たな現場司令官が必要としてきた。

 しかしこれは本当の理由ではない。実際には、日米共同軍事行動を行う上で、米軍の「インド太平洋軍司令官」に対応する自衛隊の司令官がいないという不満が、米軍サイドからも上がっていたのだ。いわば日米軍事同盟を強化するための組織づくりということだ。

 米軍が「統合運用」へと軍組織を変革したのは、21世紀初頭のアフガニスタン、イラク戦争を行ったブッシュ政権の時だ。侵略戦争をより効率的に運ぶための統合だった。海外派兵体制の整備に向け、自衛隊もこれにならった。

日米韓軍事同盟へ

 しかしこれは、自衛隊が独自の3軍司令部を持つことだけを意味しない。一旦戦争になれば、日米合同軍はそれぞれの司令官の下で軍事作戦をすることはないからだ。自衛隊が米軍司令官の指揮下で戦闘を行うことになるのは必至だ。実際、1953年の日米安保条約締結時から「指揮権密約」があったことが明らかにされている(末浪靖司『「日米指揮権密約」の研究』に詳しい)。

 韓国軍もまた、戦時の作戦統制権は米軍が司令官を務める米韓連合司令部が持つ。日米韓3か国首脳会談(8/18)は軍事同盟の強化をうたったが、自衛隊は3か国一体として軍事作戦を行うための組織整備をはかっているのだ。

 新たに創設する「自衛隊海上輸送群」は、沖縄・南西諸島に軍事物資を輸送する3自衛隊共同の部隊だ。離島への軍事物資陸揚げ用「機動舟艇」3隻、輸送ヘリコプター30機を備える。「台湾有事」を掲げ、侵略軍としての武器、組織の整備に突き進む自衛隊。許してはならない。
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