2023年09月15日 1788号

【MDS18の政策 ―第6回 教育/月100時間のタダ働き―/放置許されない教員の定額働かせ放題】

 「18の政策―教育」では直接触れられていないが、重要な問題を取り上げる。労働問題である公立学校教員の定額働かせ放題≠セ。

 2022年度の文部科学省・教員勤務実態調査(速報値)によると、持ち帰り仕事を含めた公立学校教員のひと月あたり残業時間平均値は、小学校82時間16分、中学校100時間56分、高等学校81時間だ。しかも時間外勤務・休日勤務の割増賃金は支払われていない。

 民間であれば労働基準法違反で摘発や、未払い残業支払いを求める争議や訴訟になるところだ。だが、公立学校では違法とならない。教育公務員給与特例法(給特法)があるからだ。

 7条だけのこの法律は、給与月額の4%を教職調整額として支払うことで、時間外勤務手当及び休日勤務手当は支給しないと定める。時間外勤務を命じることができるのは、校外学習等生徒実習、修学旅行等学校行事、職員会議、非常災害時の児童・生徒への緊急措置(安全確保など)に限られる(超勤4項目)。調整費が4%とされたのは、1966年の公立学校教員全国調査で時間外勤務のひと月あたりの平均が8時間、1日20分程度だったからだ。

 以降、「超勤4項目」以外の教材研究、生活指導、テスト・課題の採点・添削、教材作成、部活動顧問などの時間外・持ち帰り・休日労働は「自主的・自発的な勤務」という造語でかたづけられ、ただ働きが強いられてきた。学校現場の実態だけでなく、裁判で教育委員会が「教師の仕事が尊いのは無償で働くからだ」と開き直ったことすらある。

手直しではすまない

 教員の時間外勤務は年々増え、全く実態に合わない法律が50年も放置されてきた。その結果、うつ病など精神疾患の休職者数は21年度5897人と最多になった(図1)。学校種別では小学校2937人、中学校1415人、高校742人、特別支援学校772人だ。



 休職者が出ても、すぐに欠員が補充されることはない。教育委員会は欠員補充は非常勤や期間雇用といった非正規雇用で対応しようとするが、なり手がいない。結果、人手不足に拍車がかり、年度を超えても欠員のまま。労働強化が進む。

 「裁量労働制の拡大」など定額働かせ放題を狙った新たな改悪の動きには、労働運動も敏感だ。だが、50年来続いてきた定額働かせ放題である給特法は焦点化してこなかった。近年、ようやく個々の教員の裁判(7月、富山地裁が「部活動は勤務」と8300万円の賠償を命じ、判決確定)やSNS発信などをメディアも取り上げ、政府も対応せざるを得なくなっている。それでも自民党の特命委員会の議論では、4%の手当を10%に引き上げるといった小手先の取り繕い策だ。

 ブラック労働を合法化する給特法の維持・手直しでは解決しない。(おわり)
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