2023年09月15日 1788号

【みるよむ(665)2023年8月19日配信/イラク平和テレビ局in Japan/民衆直撃、民営化導く石油値上げ法案/―イラク石油労働者が阻止―】

 イラク国民議会に、石油価格を2倍に引き上げる予算法案が提出された。汚職だらけの政府の財政確保のために市民の負担をさらに増やすものだ。石油労働者は値上げ反対闘争に立ち上がった。6月、サナテレビはこの闘いを報道した。

 予算法案第42条とは、企業に配給する石油価格を1バレル当たり1万1千ディナール(約1千円)から2万2千ディナール(約2千円)へ一気に2倍に値上げしようとするものだ。

 サナテレビは、石油価格の値上げが「民衆を困窮させ、新たな貧困の数字を増加させる」と批判する。さらに法案には、公的企業を経営難に陥れ、民営化を推進する狙いがある。民営化で首切りが狙われるのは、イラクでも数十年にわたって経験してきたことだ。

 これに対して南部石油会社の石油労働者たちがデモやストライキなどの大規模な反対運動を展開した。石油労働者は「この条文の目的は、製油会社に損失を与えておいて、その後で民営化することだ」と強調した。

 石油労働者の奮闘によって、政府は石油値上げ法案42条を撤回した。イラクの労働者の大きな成果である。

政府は処罰で復讐企む

 一方で、IMF(国際通貨基金)の意向を受けたイラク政府は、反対運動に参加したデモの関係者や活動家を処罰し、復讐しようとしている。サナテレビは「IMFが歴代政府と連携して、新自由主義政策を強力に推し進めている」と指摘する。イラク政府に資金を貸し、その条件として社会福祉や医療の切り捨て、公的企業の民営化を押しつけ、失業を増大させてきた。このIMFへの出資1位は米国、2位は日本である。

 イラク石油労働者の闘いはグローバル資本の支配に対する闘いであり、日本の私たちにも共通する闘いである。イラク市民・労働者の闘いに連帯していこう。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)

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