2023年09月22日 1789号

【ガソリンが過去最高値 市民置き去りの岸田「補助金」 ガソリン税廃止 消費税減税を】

 9月4日、ガソリン価格が過去最高値に達した。高まる市民の不満に、岸田政権は、ガソリン補助金の延長を決めている。全国平均で175円/1g程度になるよう調整し、人びとの不満を当座は補助金バラマキで押さえようというのだ。

税軽減は徹底回避

 ガソリン価格の上昇は家計や運送業はじめガソリンを使う中小零細業者を直撃する。ただ、ガソリンと灯油の支出が家計全体の消費に占める比率は2・2%程度であり、数兆円の税金を投じるにもかかわらず、効果は市民にとってわずかなその場しのぎにすぎない。根本的対策とならない補助金に頼るのではなく、ガソリン税廃止や消費税減税こそを求めなければならない。

 ガソリンには3段階の税金が課せられている。ガソリン税(本則税率)で1g当たり28・7円、ガソリン税(当分の間税率、上乗せ分)25・1円、石油石炭税2・8円である。さらにガソリン本体の価格と合わせて消費税がかかる(図1)。



 「当分の間税率」とは、もともと道路整備のための暫定税率であったがその役割を終えて暫定税率の廃止の際に「同じ税率を当分の間続ける」とされたものだ。2010年の暫定税率廃止から13年が経っても「当分の間」状態が続いている。

 暫定税率廃止を決める時に「トリガー条項」が成立した。160円(レギュラー)以上の価格が3か月続くと暫定税率の課税を止め、130円以下が3か月連続すると税率をもとに戻す仕組みだ。現状はトリガー条項の発動を必要としているが、東日本大震災の復興財源のためとして発動が凍結されており、凍結解除には震災特例法の改定が必要とされる。

 価格高騰対策としてトリガー条項の発動を求める声が大きくなっている。だが、岸田政権は頑として譲らない。鈴木俊一財務大臣は8月29日、「発動終了時に大幅な価格変動が生じて、発動前の買い控えや、終了前の駆け込み、流通や販売の現場に与える影響が大」と否定した。買い控えや駆け込みは一時的なものだ。真の理由は、大軍拡優先のために少しでも財源が失われるのを避けることにある。

補助金は市民の税金

 今回のガソリン価格高騰は、原油価格が落ち着いている中で生じている。高騰の主な要因は円安だ。今後も円安が続くと予想されるだけに、円安対策を行わない限りガソリン価格は高いままで推移する。根本解決には円安対策が必要なのだ。

 また補助金に頼らない政策を検討しなければならない。補助金で一律に価格を下げるため、「富裕層や好業績企業も大きな恩恵を受けている」(8/31朝日)こと、また自動車を持たない人への恩恵が直接的にないことも考えるべきだ。

 昨年1月から始まったガソリン補助金に、これまで6兆2千億円の予算が使われた。それは昨年過去最高益を上げた大手石油元売りらに投入され、市民や零細業者を直接救済するものとはなっていない。補助金の継続とは、消費税など重税や社会保険料値上げに苦しむ市民からの税金をさらに使うことを意味する。大企業へのバラマキとの批判の声が上がるのは当然なのだ。

 9月、食品値上げ2067品目をはじめさまざまな物品・サービス価格引き上げで、物価高が続くことは間違いない。トリガー条項の発動を超えてガソリン税そのものを見直すべきだ。

 JAF(日本自動車連盟)が8月31日、より積極的な声明を出した。その内容は「ガソリン税等に上乗せされ続けている『当分の間税率』を廃止」「ガソリン税に消費税が課税されている『Tax on Tax』(二重課税)という不可解な仕組みを解消」の2点である。ガソリン本体だけの課税にするよう求めたのだ。

 さらに進めてガソリン税の廃止、そしてすべての市民にいま緊急に必要な消費税減税こそ要求しなければならない。

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