2023年09月22日 1789号

【福島原発汚染水放出差し止めへ 原告151人が集団提訴】

 福島原発事故で発生した汚染水の海洋放出強行を受け、これ以上の放出をなんとしても食い止めようと、地元住民らが9月8日、差し止めを求める裁判を福島地裁に起こした。原告は福島県を中心に宮城、茨城など地元住民と、福島からの避難者など市民151人。放出計画を認可した原子力規制委員会に対しては認可の取り消し、東京電力には放出差し止めを求めている。原告・支援者が提訴に合わせて福島地裁周辺をデモし通行人にアピールした。

 提訴後、福島市内で行われた報告集会には約100人が参加した。台風接近の影響で一部交通機関が運休・遅延したため県内からの参加者が多くを占めた。

 事故から12年、長期にわたって放射能との「共存」を強いられ、あきらめムードが深刻化していた福島県内からこれだけ多くの参加者があったことは、今回の汚染水放出への怒りの大きさを物語る。

 弁護団が、今回の訴訟の争点について説明する。原発事故は過失だが、汚染水放出は故意であり、加害者である国と東電による「二重の加害」であること、漁業者の漁業権や人格権、県民らの「平穏に生活する権利」を侵害し、汚染者負担原則に違反、福島県漁連と交わした約束をほごにするなど手続き上も違法であることなどを指摘した。

 汚染水タンクが設置されている大熊町から避難した大賀あや子さんは避難先の新潟から駆けつけた。「大熊町議会は汚染水放出を認める決議をしたが、住民の意見を聞く機会は設けられず、放出反対の町民の声は反映されなかった。政府は大熊町の復興を放出の口実にしているが、町民一人ひとりの意見が反映され、汚染水の安全な処理方法が確立されることが私の願いだ」。政府の「口実」は町民の総意ではないと訴えた。

国際条約違反だ

 汚染水放出がロンドン条約1996年追加議定書違反であることも弁護団から示された。議定書は「人工海洋構築物」からの放射性廃棄物の海洋投棄を禁止している。先の国会で、政府は阿部知子衆院議員(立憲)の質問主意書に対し、放出のための海洋トンネルが人工海洋構築物に当たらないと答弁したが、詭弁だ。

 日本政府みずから海洋環境汚染を国外に広げることで、国内問題だった放射能汚染問題まで国際問題化した。国際法にのっとり、海洋環境保護の責任を果たす上からも、放出を直ちに止めなければならない。

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