2023年09月22日 1789号

【未来への責任(382)関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式】

 今年は関東大震災、そして朝鮮人・中国人虐殺から100年である。

 9月1日午前11時から、「9・1関東大震災朝鮮人犠牲者追悼式典実行委員会」主催の追悼式が、墨田区の横網町公園内にある関東大震災朝鮮人犠牲者追悼碑前で行われた。

 この追悼碑は、震災から50年の1973年9月に建立された。碑の石版には「関東大震災の混乱のなかであやまった策動と流言蜚語(ひご)のため6千余名にのぼる朝鮮人が尊い生命を奪われました」と刻まれている。建立にあたっては、東京都や都議会等とも協議を重ね、歴代の都知事も追悼式には追悼文を寄せてきた。ところが、小池百合子知事は就任二年目以降、頑なに追悼文の送付を拒否し続けている。

 猛暑の中、追悼式には数百人が参加した。韓国伝統舞踊家の「サルプリ舞」が捧げられ、追悼のメッセージが読み上げられた。作家の中沢けいさんは「この百年の間に多くの人が願ったのは、毎日を平和で豊かに暮らすことだった。その望みはかなったと言っていいだろうか? 次の百年が国と国、民族と民族がお互いに尊重される時代となるよう願わずにはいられない」と訴えた。フォトジャーナリストの安田奈津紀さんは「ただ曖昧に『祈る』だけでは不十分であると痛感する。加害の歴史に背を向ける権力者の姿勢は、奪われた命への冒涜(ぼうとく)であり、今を生きる命をも軽視している」と日本政府や東京都の姿勢を批判した。

 午後1時からは「東京朝鮮人強制連行真相調査団」主催の追悼式も行われ、多くの方が参列した。家族に犠牲者がいる代表の西澤清さんは「当時11歳の父は震災時の虐殺事件について、『ひでえもんだ。横浜から朝鮮人が井戸に毒を入れながら攻めてくると大声でいうやつがいて道端で人が殺されてんだ。それはおぞましいもんだ。人間は恐ろしいものだ』と死ぬまで言い続けた。事態の発生を防げなかった国とその誤りを糺(ただ)せなかった日本人の責任をタブーなしに掘り下げたい」と訴えた。

 例年、「日本女性の会 そよ風」という団体が追悼碑の近くでヘイト集会を繰り広げてきた。2020年には東京都人権尊重条例に基づきヘイト団体として認定されている。ところが、今年は時間をずらして朝鮮人追悼碑の前で集会を行うとし、あろうことか東京都もヘイト集会を許可したのだ。挑発以外の何物でもない。多くの反対者が駆けつけたが、都職員と警察に守られて排外主義者が集会を行う様は異様であった。

 ヘイトの拡大が新たな犠牲者を生みかねない危険な時代である。関東大震災で朝鮮人・中国人への流言蜚語をあおった行政の責任を絶対に認めさせなければならないと改めて胸に刻んだ。

(日本製鉄元徴用工裁判を支援する会 山本直好)

MDSホームページに戻る   週刊MDSトップに戻る
Copyright Weekly MDS