2023年09月29日 1790号

【ミリタリーウオッチング/武器輸出に前のめりな岸田政権/殺傷能力兵器も解禁狙う/―破滅の道ではなく軍縮への議論を―】

 ロシアのショイグ国防相が7月に朝鮮(朝鮮民主主義人民共和国)を訪問し、「中朝露による海上軍事合同演習」「大きな枠組みの軍事協力」について話し合われたとの報道。9月11日には、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党総書記がロシアを訪問。プーチン大統領と会談し、武器取引を含めた両国の軍事協力が協議されたことが報じられている。冷戦時代の軍拡競争に逆戻りである。

 この渦中で、一方の当事者として中朝露に軍事を含めて対峙することをいとわず、日米韓を中心にした軍事ブロックの強化に奔走する日本政府。武器輸出に関し、政府がめざす「武器取引の自由化」に大きな障害となっている「防衛装備移転三原則」の撤廃に本格的に乗り出した。

戦闘機部品の輸出も

 自民、公明両党のワーキングチームが7月初め、「防衛装備移転三原則」とその運用指針の見直しを巡る論点整理を行い、方向性を打ち出した。(1)日本が英国、イタリアと開発する次期戦闘機を念頭に、国際共同開発・生産した装備品について日本から第三国にも直接移転できるよう議論すべき(2)ウクライナへの武器支援を念頭に「国際法に違反する侵略や武力行使を受けている国への支援」を輸出の目的に記載すべき―等を一致点として挙げた。

 現行の運用指針は、国際共同開発・生産に限って武器を含む「装備」の開発国同士の「移転」を認めている。それ以外の「装備移転」は▽救難▽輸送▽警戒▽監視▽掃海――の5類型などに限定しているが、「装備」に搭載し輸出できるようにすることに「意見の一致があった」とも。それには、機雷の爆破処理に必要な機関砲や不審船などを制止するための停船射撃に用いる銃器が該当とのこと。さらに部品については、F15戦闘機の中古エンジンなど完成装備品に殺傷能力があっても、部品そのものに殺傷性がなければ「移転」を可能とすべきだとの意見も記載している。武器取り引き全面解禁への政府によるアプローチは周到だ。

 日米、米韓をはじめ東アジア、太平洋でこの間繰り広げられ、拡大される合同演習。さらに、ウクライナ戦争で活発に行われ、軍需産業が大儲けを企むだけの武器輸出の実情。これに対応する中朝露の軍拡は、ある意味、必然の流れである。

 どちらが先かは問題ではない。このような軍拡の流れは、国会での論議すら行わず、市民社会の論議を排除して行われる。「専制国家」であろうと、自称「民主主義国家」であろうとそこは共通した事実だ。市民が求めるのは軍縮だ。行きつく先は破滅しかない軍拡競争に歯止めをかけるのは、市民社会の理性に基づく論議しかない。軍拡か軍縮か、真っ当な論議を要求しよう。

豆多 敏紀
平和と生活をむすぶ会
MDSホームページに戻る   週刊MDSトップに戻る
Copyright Weekly MDS