2023年09月29日 1790号

【みるよむ(667)2023年9月2日配信 イラク平和テレビ局in Japan イラクの学生寮の劣悪な状態を改善しろ】

 イラクでは教育全般が劣悪な状況だが、大学の教育条件も悪化している。特に学生寮では、設備の老朽化が進み食事の提供など多くの問題が生まれている。2023年6月、サナテレビは学生寮を取材して問題点を明らかにした。

 イラクで遠隔地の大学に入学した場合、学生寮で生活することが多い。しかし、そこではかつてはあった給食が行われていない。占領以前のフセイン独裁政権時代でも、学生寮では食事が提供されていた。現在の寮生活では、学生は自炊する以外にない。それも、「キッチンは清潔さに欠け、虫やネズミがそこら中にいる」というありさまだ。

 部屋の状態もひどい。個室はなく、2段ベッドが所狭しと置かれている。「25uの部屋に8人の学生」というが、実際は1部屋10人、12人になる場合もある。

 女子学生寮はさらに劣悪だ。階段も古く段差が大きく、重い荷物の移動には大変な苦労を強いられる。寮の出入りは「朝8時以前の外出は禁止。帰宅時間は遅くとも午後3時」とされる。午後遅くまで講義があるのは当然であり、特に医学部は病院での実習などもあるために帰寮が遅れる。帰りが遅くなるたびに寮の警備員とトラブルが起きる。

まかり通る女性差別

 家族も扱いに困惑している。女子学生の父親が面会に来ても、寮のホールにさえ入れず、外の門前でしか娘に会えない。明らかな女性差別がまかり通っている。

 サナテレビは、高等教育・科学研究大臣を登場させるが、教育行政が時代錯誤的で差別的な寮の実態を承認しているのだ。

 イラク政府はIMF(国際通貨基金)の指示に従って教育、医療、福祉予算を削減している。学生寮の劣悪な状況を生み出す元凶だ。サナテレビはこうした現実を明らかにし、学生寮をはじめ教育条件の改善、社会の変革を訴えている。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)

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