2023年09月29日 1790号

【絶望しかない大阪・関西万博/今さら「国の責任」と言う維新/カジノありきが間違いのもと】

 大阪・関西万博の雲行きがいよいよ怪しくなってきた。目玉の海外パビリオンの建設工事が大幅に遅れ、2025年4月の開幕に間に合いそうもないのだ。会場建設やインフラ整備の費用は膨らむ一方。カジノ・IRのために万博を推進してきた維新府政・市政の責任が問われている。

建設工事の遅れ

 大阪・関西万博には、これまでに153の国と地域が参加を表明している。そのうち56の国と地域が自ら費用を負担して設計から建設までを行う「タイプA」のパビリオンを整備する予定になっている。

 だが、建設資材の高騰や人手不足で準備が難航。建設に必要な大阪市への仮設建築物許可申請はいまだゼロ。そこで万博協会は工期短縮の切り札として「タイプX」への移行を各国に提案した。組み立て式の箱形の建物を協会が建て、内装や外装のデザインなどを各国に委ねる方式だ。ひらたく言うと、プレハブの建て売りである。

 ゼネコン関係者は「タイプAの国の半分ぐらいがタイプXに移行しないと、開幕に間に合わないというのが正直な印象だ」と指摘する。それなのに、タイプXに変更する意向を協会側に示した国は9月15日時点で1か国しかない。「関心を示している」という国すら10か国だけなのだ。

 この先、奇跡的なことが起きて契約がとんとん拍子にまとまったとしても、建設工事には難問が待ち構えている。万博会場である夢洲(ゆめしま)(大阪市此花区)は大阪湾に造設された人工島で、トラックなど車両でのアクセスは橋とトンネルの2ルートしかない。工事が本格化すれば、資材運搬に支障をきたすことは確実だ。

 そのうえ、来年4月から罰則付きの時間外労働の上限規制が建設業にも適用される。労働者に長時間労働を強いる突貫工事はできないということだ。困り果てた万博協会は政府に対し、万博関連工事については上限規制の対象から外すよう要請した。

 身勝手すぎる要請に、建設業界や労働組合が猛反発したのは当然である。過労死弁護団全国連絡会議も抗議声明を発表。「博覧会協会が求めるような労働時間規制の適用除外を行わなければ開催できないイベントであるというならば、開催を取りやめるほかはない」と言い切った。

 そもそも、埋め立て地である夢洲は液状化や大規模地盤沈下のリスクを抱えており、これがゼネコン各社に敬遠される一因になっている。中堅ゼネコンのベテラン社員は「万博の工事には手を出さないほうがいい。やけど程度では済まない」(9/5東洋経済オンライン)と吐き捨てる。もはや「総スカン」といっても過言ではない状況なのだ。

夢洲にしたのは維新

 万博延期論や中止論が飛び交う中、強力に旗振りしてきた日本維新の会の幹部から責任転嫁としか言いようがない発言が相次いでいる。「国のイベントなので、大阪の責任ではなく、国を挙げてやっている」(馬場伸幸代表)、「万博っていうのは日本万博ですから、政府が主導してやるのは当然だと思う」(吉村洋文・大阪府知事)等々。

 大阪への万博誘致を自分たちの手柄だとさんざん吹聴しておきながら、今さら何をいっているのだ。たしかに万博は国の事業だが、会場を夢洲にしたのは維新である。松井一郎・大阪府知事(当時)の強い要望によるものだった。

 インフラ整備などに余計な費用がかさむうえに、台風や地震・津波に弱くイベント会場としては安全性からも不適格――そんな夢洲をなぜ万博会場に選んだのか。答えは簡単。維新が開業を目指すカジノ・IRの予定地だからである。

 帝塚山学院大の薬師院仁志教授は「維新にとっては、もともと夢洲にカジノをつくることが目的。万博はその整備を進めるための大義名分に過ぎない。もっといえば、夢洲の開発そのものを目的にしているように見える」と指摘する(9/6東京新聞)。

巨額の税負担

 万博の会場建設費はすでに当初の1250億円から1850億円に膨らんでいるが、さらに上振れし2千億円台に突入する見通しとなった(9/15毎日)。建設費は国、大阪府・市、経済界が3分の1ずつ負担する仕組みで、補正予算案が臨時国会に提出される。万博のためにさらなる税負担を強いるというのだ。

 鉄道や道路整備費などを含む万博とカジノ関連のインフラ整備費は当初額の約3400億円から約7500億円へと大きく膨れ上がっている(8/29しんぶん赤旗)。それでも維新はデタラメな政策に固執し、血税を注ぎ込もうとしている。まさに「身を切る改革」と称して人をだます詐欺集団というほかない。 (M)

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