2023年10月13日 1792号

【米国巨大資本を揺るがすUAW自動車労組ストライキ/組合変革を遂げた労働者の力】

 UAW(全米自動車労働組合)は9月15日午前0時、ゼネラル・モータース(GM)とフォード・モーター、ステランティス(旧クライスラー)の3自動車メーカーで、史上初の同時ストライキを開始した。ミシガン、オハイオ、ミズーリの3つの組立工場で1万3千人が ”スタンド・アップ・ストライキ”に突入。3社には約15万人の組合員がおり、生産に有効に打撃を与える工場を定めてストライキに入ったのだ。

 スタンド・アップというのは、これから次々に立ち上がり全面ストライキへ拡大していく可能性を示す。20世紀の米国労働運動に火をつけた1937年のGMでのシットダウン・ストライキ(座り込み工場占拠闘争)≠ノちなんだ命名だ。

40%賃上げと階層制撤廃

 UAWと3社は、賃金などを定めた労働協約を4年ごとに改定している。今年は改定の年で、9月14日午後11時59分が期限だった。

 レイバーノーツ(労働運動メディア、組織化プロジェクト)によれば、UAWの要求は、次の4年の協定期間中の40%以上賃上げ、ベテランに比べ低賃金が長期に続く新規採用の賃金体系(階層制)撤廃、賃金を下げない週32時間労働制の実現、電気自動車への公正な移行(EV労働者の賃上げ・雇用確保)、工場閉鎖を巡るストライキ権などだ。

 40%賃上げの根拠は、これらの企業の利益は過去4年間だけでも65%急増し、各社の最高経営責任者(CEO)の報酬が労働者の実質賃金が30%減少したにもかかわらず同期間に40%上昇していることだ。

 ショーン・フェインUAW委員長は「自動車の平均価格は過去4年間で34%上昇したが、1台あたりの人件費上昇は4〜5%だ。コスト上昇の責任は、労働者ではなく企業の高利潤追求にある」と主張する。

 賃金の階層制について、フォードUAWローカルのティファニー・エリス・シップさんは「赤ちゃんがいるのに時給10ドルでは生きていけません。入社し、私は自らの賃金が他の労働者の半分にしかならない階層であり、前からフォードで働いている仲間たちの時給が32ドルで年金も出ることを知りました」と語る。階層制撤廃は自動車産業の中に生み出された多くの低賃金労働者の切実な要求だ。

 フェイン委員長は、週32時間労働制について「我々は世界屈指の過重労働集団だ。家族を支えられるだけの賃金を誰もが稼ぎ、生活を楽しみ、子どもたちが成長し、両親が老いていくのを見守るだけの余暇を得られる社会というビジョンのために、我々は闘わなければならない」と言う。

 米国では、過去数十年間なかった労働運動活性化が進み、ギャラップ社の世論調査でも市民の75%がUAW労働者を支持している。

組合の民主的変革の勝利

 3月25日、連邦政府監視官が、改革派の挑戦者ショーン・フェインがUAWの委員長職を勝ち取ったことを発表した。なぜ連邦監視官がUAWに関与しているのか。2021年にUAWの腐敗の是正を監視するために司法省の監視官が任命された。過去5年間で2人の委員長経験者や10人以上のUAW幹部が横領や収賄などの罪で刑務所に収監されている。監視官は、委員長選出方式を、従来の少数の大会代議員による投票とするのか、全組合員の直接投票制度に切り替えるかを、組合員の投票で決するように命じた。

 その結果、組合員が選択した初の全組合員直接投票でフェイン委員長が誕生した。執行部の構成でも、フェインの所属するUAWD(Unite All Workers for Democracy)というコーカス(組合内の独自組織、役員選挙の際の候補者リストも作る)が、UAWを75年間支配してきた腐敗と不正の管理コーカスを上回った。

 今回の労働協約改定闘争は、管理コーカスの下の以前のUAW執行部が続けてきた会社への譲歩を取り消すことを目的とする。また、電気自動車への移行を自動車労働者の労働基準をさらに弱めるために利用させないことも目的の一つだ。

ストはさらに広がる

 40%の賃上げ要求に対して各社は20%程度を回答したが、他の要求に前進がなかったことでUAWはストライキに突入した。階層制廃止を重視しているのだ。

 UAWは9月22日、回答に前進のあったフォードを除き、GMとステランティスの38の部品配送センターで5千人がストに立ち上がった。これらの施設は20州にまたがり、各社でも非常に収益性が高い部門だ。

 管理コーカスに支配されしらけていた組合員は大きく変わった。まだストライキに入っていない組合員は、エイト・アンド・スケート(8時間働いたらさっと帰宅)という残業拒否や、休憩時間・昼食時にサービス労働をしない闘いを続けながらストライキの拡大を心待ちにしている。これによって各社の日曜生産が停止している。シフトの直前や直後に10分間休憩室ミーティングを開いて情報交換と意思統一を行っている。

 UAWD結成は4年前だ。民主的改革派の勝利で、職場の組合員一人ひとりが闘いの主体となり、今ストライキ闘争を前進させている。

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 日本でも連合支配を打破し、現場の労働者に根差した労働運動を再生しよう。



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