2023年10月13日 1792号

【文化・インフラの危機/54万の声を聞いて/インボイス反対 官邸前1000人】

 10月1日から始まる消費税の「インボイス(適格請求書)」制度の中止を求めて9月25日、首相官邸前アクションが行われた。「岸田総理インボイス増税をやめろ〜LISTEN TO OUR VOICE」を掲げた1000人の参加者とオンライン署名国内最多の54万筆超集まった反対の声に、岸田は自慢の聞く力≠発揮しないのか。

 インボイス制度は売上高1千万円以下の免税事業者が、課税事業者になり新たな税負担を強いられるか、免税事業者のままで取り引きを減らされるかもしれないリスクを背負うかの「地獄の二者択一を迫る制度」(志位和夫共産党委員長)。福島みずほ社民党党首は「弱いものいじめの増税、インボイスを認めるわけにはいかない」と強く中止を訴えた。他の野党議員もインボイス反対、さらに消費税減税、廃止を強調した。

 日本の豊かな才能が滅びてしまうかも。arca(アルカ)のCEOでクリエイティブディレクターの辻愛沙子さんは「能力ではなく、国が決めた制度によって私たちの生活を彩っている作品が失われていくかもしれない。小さくても多種多様な才能がものづくりできる社会であってほしい」

 漫画家の由高れおんさんは「アシスタントは年収300万円以下が半数以上。課税事業者になれば何のために仕事をしているかわからなくなる。アシスタントがいなければ仕事が成り立たない作家は多い」。同じく漫画家の環望さんも「新人が育たなくなる」と漫画界の将来に警鐘を鳴らす。

 VOICTION共同代表の声優甲斐田裕子さんは「インボイス、消費税は日本の文化やインフラを破壊し生産性を落とし、健康で文化的な生活を奪っていく」とエンタメだけではなく全体の危機を指摘。英会話教師・ウーバーイーツ配達員・ライターなど様々なフリーランスが中止をアピール。

署名手交拒否を突破

 主催者のインボイス制度を考えるフリーランスの会(STOP!インボイス)を代表して阿部伸さんは「一年半前、ある自民党議員に3万5千筆の署名が集まったと伝えたら鼻で笑われた。次に10万筆持っていったら、『30万筆持ってこい』。さらに『大きな集会をやってみろ』と言われ、去年日比谷野音で1200人を集め、今年6月には反対全国一揆集会を開催。『平日の昼間に議員会館の会議室を満席にしたら認めてやる』と言われ、9月4日には立ち見も含め350人集まり、財務省に緊急提言を手渡した。自民党の要望を皆さんとともにクリアしてきた。次は総理が我々の声を聞く番だ」と官邸に向けて訴えた。

 25日は署名の手交は一切拒否されたが、29日、総理秘書官に受け取らせた。

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