2023年10月13日 1792号

【みるよむ(668)2023年9月9日配信:イラク平和テレビ局in Japan イラク政府の電力供給の失敗】

 イラクでは、市民に対する電力供給が不十分で、7月、8月には気温が50度にも達するのに、クーラーが動かないという事態が起こっている。政府当局はこうした状況に対処できていない。2023年6月、サナテレビはこのようなイラクの電気供給の実態を取材し、政府の電力政策の問題点を浮き彫りにしている。

 イラクの家庭向け電力は、現在、国営の発電所と民間の小規模な発電業者の両方から供給されている。

 政府は、全般的な物価高の中で、電気料金が上がることによって市民の不満が広がるのをおそれ、電気料金を抑え込んでいる。この政策は、市民生活の観点から考えると、一見良いものに見えるかもしれない。

 しかし、実際にはそうではない。民間の発電業者は、料金を抑え込まれ、「燃料、オイル、メンテナンスなどの出費に電力の価格が見合わない」という事態に直面している。採算が取れず収益を見込めない業者は、発電機のメンテナンスも行わず、しばしば電力の供給を止めることになる。気温が50度かそれ以上に達する真夏であっても、クーラーが止まってしまうのだ。

元凶は電力供給の民営化

 これは一部の電力業者の問題で済むものではない。そもそもは電力供給の民営化から問題は始まっている。本来、電力供給は政府が責任をもつ公的事業にすべきなのだ。電力の供給が止まり、猛暑で命を失うかもしれない事態となっているのに、業者も政府もまともな対策を行っていない。

 イラク政府は、電力料金未払いの者を逮捕すると威嚇したり、電力供給業者に採算が取れない価格を強制するなどその場しのぎの対応しかしていない。それは、電力供給計画の失敗をごまかしているにすぎない。

 サナテレビはこうした事実を示し、市民の生活を守る安定した安価な電力供給を要求している。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)

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