2023年10月13日 1792号

【読書室/辺野古裁判と沖縄の誇りある自治 検証 辺野古新基地建設問題/紙野健二・本多滝夫・徳田博人編 自治体研究社 1500円(税込1650円)/最高裁判決でも闘える確信】

 9月4日、最高裁判所は8月24日に続き、辺野古新基地建設の変更申請不承認への国の介入を不当とする沖縄県の訴えを退けた。

 辺野古裁判を簡単に整理する。辺野古新基地の埋め立て工事の中で軟弱地盤が見つかり、沖縄防衛局は埋め立て設計の変更を沖縄県に申請した。申請に対し、県は2021年11月に不承認を決定。これを不服とした沖縄防衛局は、国土交通大臣に審査請求を行う。国交大臣は、不承認処分を取り消す裁決を行った。

 沖縄県は、その取り消しを求める訴え(裁決取消訴訟)と、国交大臣が知事に変更処分をするよう命じた是正指示の取り消しを求める訴え(指示取消訴訟)の2つの裁判を起こした。

 福岡高裁は今年3月、裁決取消訴訟は却下、指示取消訴訟は請求棄却の判決を言い渡した。県は判決を不服として上告したが、最高裁は県に弁論の機会すら与えず訴えを退けた。国追随の不当判決を行ったのだ。

 本書は、辺野古裁判の争点に関するシンポジウムの記録、識者による辺野古裁判と辺野古基地建設の論考から成る。高裁判決の問題点(それは最高裁判決も同じだ)や、いま沖縄県が「誇りある自治」を実践する意義が明らかにされる。

 最高裁敗訴でも県に承認義務は生まれない。承認せず、再度の不承認、最初の埋め立て承認撤回も可能だ。特に、本来使うべき「空港基準」でなく緩い「港湾基準」の適用という耐震基準不備(本書第2部第2章)や県民投票が示した民意に背くなど公有水面埋立法第4条1項1、2号違反(第2部第5章)は決定的だ。

 国の申請が決して許されない根拠を改めて確信することができる。  (I)
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