2023年10月20日 1793号

【代執行手続き中止し対話で解決へ/沖縄県は民意尊重の立場堅持を/行政法研究者が声明・記者会見】

 新基地建設の設計変更を国が沖縄県に代わって承認する「代執行」の強行に向け、斉藤鉄夫国土交通相は10月5日、福岡高裁那覇支部に提訴した。同じ日、衆院第一議員会館で行政法研究者が「9・4最高裁判決および国土交通大臣の代執行着手を憂慮する声明」について記者会見した。

研究者101人が声明賛同

 声明は9月27日に発せられ、101人の行政法研究者の賛同を得ている(10/5現在)。

 会見には、呼びかけ人13人のうち5人が出席。本多滝夫・龍谷大学教授は「代執行手続きの存在自体が、最高裁判決で是正の指示が適法とされても地方自治体の責任者である知事には指示に従わない余地があることを予定している。知事はこの仕組みを利用し、代執行訴訟を地方自治体が自治の矜持を示す機会としてとらえて正面から向き合ってほしい」と求めた。

 白藤博行・専修大学名誉教授は「問われているのは沖縄の海をどうするか、沖縄県民の命と人権をどうするか」と前置きしつつ、知事の不承認処分を取り消した国交相の裁決書について「国交省の職員1名を『審理員』に指名し作成させた『審理員意見書』の完璧なコピペ。国交相の是正の指示も裁決書と全く同じ。最高裁は中身に全く触れず、是正指示を適法とした。代執行訴訟ではきちんと証拠をもって実体的に審理してほしい」と語気を強める。

 「代執行手続きに入るには『代執行以外の方法で是正を図ることが困難』などの要件がある」と指摘するのは、岡田正則・早稲田大学教授。「沖縄防衛局は埋め立て事業者なら自ら裁判所に訴えて『知事は承認せよ』と要求できるのに、国交大臣に丸投げ。国は手段を尽くしていない。代執行はやってはならない」

運動が力関係を動かす

 代執行訴訟の争点に関連して紙野健二・名古屋大学名誉教授は「県が触れてこなかったジュゴン、遺骨土砂、耐震構造などを取り上げるのが訴訟戦術上有効かどうか、考えなければいけない。それをプッシュするのは県民・国民の運動であり、力関係を動かしていくことが必要」と指摘する。

 会見の進行役は徳田博人・琉球大学教授。「行政法研究者400人のうち100人以上が賛同。日本の人口にすると3000万人が『最高裁判決おかしい』と言っていることになる」と声明の意義を強調した。

 同席した赤嶺政賢・衆院議員が「普天間基地は復帰前は穏やかで、地主は中に入って農業ができた。復帰後、米軍の再編・統合で危険な基地にしたのは日米両政府。普天間の危険性除去のためには辺野古が唯一、というペテンを許さない」と締めくくった。

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