2023年10月20日 1793号

【未来への責任(384)/基地 遺骨問題の根底 植民地主義克服を】

 普天間飛行場の名護市辺野古への「移設」計画変更をめぐり承認を拒否した沖縄県に対し、日本政府は「代執行」訴訟に踏み切った。

 日本政府の琉球(沖縄)への「姿勢」は1879年の琉球処分(併合)以来一貫して差別の歴史であった。それは朝鮮植民地支配に際して「同化」を迫った自民族中心主義が引き起こした植民地主義、つまり先住民族に対する差別政策と同様と言っても過言ではない。

 2007年に決議された「先住民族の権利に関する国際連合宣言」は「すべての民族が異なることへの権利、自らを異なると考える権利、および異なる者として尊重される権利を有することを承認するとともに、先住民族が他のすべての民族と平等であることを確認」した。その第3条は自己決定権について「先住民族は、自らの政治的地位を自由に決定し、ならびにその経済的、社会的および文化的発展を自由に追求する」と規定し、第12条は「宗教的伝統と慣習の権利、遺骨の返還」について「その宗教的および文化的な遺跡を維持し、保護し、そして私的にそこに立ち入る権利を有し、儀式用具を使用し管理する権利を有し、遺骨の返還に対する権利を有する」と規定した。

 琉球(沖縄)の自己決定権を否定する日本政府に対して2014年国連人種差別撤廃委員会は「琉球を先住民族として承認することを検討し,また彼らの権利を保護するための具体的な措置をとること」を勧告した。2015年には国連人権理事会で故翁長(おなが)雄志氏が沖縄県知事として「沖縄の人々の自己決定権がないがしろにされている辺野古の状況を世界中から関心を持って見てください」と訴えた。今年9月には再び玉城デニー知事が国連人権理事会で沖縄には「基地が集中し、平和が脅かされ、意思決定への平等な参加が阻害されている」と演説した。

 遺骨返還問題については、京都大学が戦前、琉球(沖縄)の今帰仁村(なきじんそん)の百按司墓(ももじゃなばか)から人類学研究を口実に盗掘した遺骨の返還を求めて訴えた裁判が昨年4月に京都地裁で「原告らが琉球民族として祖先の遺骨を百按司墓に安置して祀(まつ)りたいという心情には汲(く)むべきものがある」としながら請求を棄却し今年9月には大阪高裁も請求を棄却した。しかし判決文の中で先住民への遺骨の返還が国際的な潮流となっている中で「持ち出された遺骨は故郷に帰るべきである」と述べ、控訴した原告らを「沖縄地方の先住民族である琉球民族に属する控訴人ら」と表現した。付言の中ではあるが、日本の司法が初めて「琉球民族」を認めたのだ。

 基地問題も遺骨問題も根底に横たわる植民地主義克服の課題を忘れてはならない。

(強制動員真相究明ネットワーク 中田光信)

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