2023年10月20日 1793号

【膨らむ万博・カジノ関連経費/さらなる税負担を求める維新/「身を切る改革」真っ赤な嘘】

 日本維新の会がセールスポイントに掲げる「身を切る改革」のメッキが剥げてきた。万博・カジノという維新印の事業に公金を湯水のごとく注ぎ込んでいることがばれてしまったからだ。追い詰められた維新は何と、今は亡き安倍晋三首相の「威光」にすがりだした。

 再来年開催予定の大阪・関西万博の予算が当初の予定より大幅に増えていることについて、「納得できない」と答えた人が64%に上ることが最新の世論調査で明らかになった(9/30〜10/1・JNN調べ)。「納得できる」は23%であった。

 それはそうだろう。当初1250億円だった万博の会場建設費は、資材価格の高騰などを理由に1850億円に膨れ上がり、さらにまた増えて2300億円程度になると見込まれている。「予算が足りないから上げてくれ」という安直な姿勢に、人びとが不信感を抱くのは当たり前だ。

 建設費の負担は大阪府市と経済界そして国が3等分することが2017年に閣議了解されている。大阪以外の人も万博の税負担を強いられることになっているのだ。政府は国の追加負担分の一部を23年度の補正予算案に盛り込み、臨時国会に提出する方向で調整を進めている。

 ある財界幹部は建設費の増額について「金額の大きさに驚いた。…民間はいくらでも金を出すと思われては困る」と不満を隠さない(9/26読売)。それはこっちのセリフである。維新がカジノのために誘致した万博の費用を、この物価高の中で市民がなぜ負担しなければならないのか。

 ところが維新の馬場伸幸代表は「万博は国のイベント」だと強調し、国が主体的に費用負担していくのは当然との認識を示した。地域政党・大阪維新の会の府議団に至っては、増額分を国の負担にさせるよう、府議会で訴えた。「身を切る改革」が聞いてあきれる面の皮の厚さである。

ついには「安倍頼み」

 もっとも、維新が援軍としてきたマスメディアの論調には変化が見られる。万博に批判的な意見をニュース番組やワイドショー番組で普通に聞くようになった。「終われば壊すハコモノに2300億円もかけてどうするのだ」「そもそも万博は過去の遺物。開催する意義などない」等々。

 維新のテレビスターである吉村洋文大阪府知事も逆風をはね返すには至らない。支離滅裂な弁解をくり返し、記者会見の場では質問に逆ギレする場面が目立つ。9月29日の定例囲み会見では、どういうわけか「安倍総理」と連呼し始めた。

 いわく「(万博誘致は)維新が最初提案して、決定したのは当時の安倍総理ですよ」「国の技術革新を考えた時に『やっぱり日本の未来に必要だよね』ってのは、当時の安倍総理が判断してくれたわけです」

 安倍政権が維新の要請に応え、万博誘致に動いたのは事実である。しかしそれは「日本の未来」といったきれいごとではなく、国政上の重要課題、とりわけ憲法「改正」に維新の協力を取り付けたいとの打算にもとづくものであった。当時の維新幹部は「首相官邸は大阪万博を実現するつもりだ。憲法改正で協力してくれというメッセージだ」と述べている(2016年10月28日付毎日新聞)。

 こうしたいきさつをみても、大阪・関西万博が市民そっちのけの空虚なプロジェクトであることがわかる。地元大阪でさえ一向に盛り上がらないのは当然だ。吉村知事にすれば、「安倍」の旗印を掲げれば右派(特にネトウヨ)は自分たちの味方をしてくれると踏んだのだろうが、この期に及んで「安倍頼み」とは見苦しいことこのうえない。

万博もカジノも無用

 大阪・関西万博は、維新の生命線であるカジノ誘致と一体の関係にある。カジノの建設予定地でもある夢洲に万博を引っ張ってくることで、この地のインフラ整備に莫大な税金を投じることを正当化しようとしたのである。

 その夢洲は建設残土や浚渫(しゅんせつ)土砂(港湾・河川などの底面をさらった土砂)などで埋め立てた土地だ。液状化、地盤沈下、軟弱地盤といったリスクを抱えており、大規模集客施設を建設するなんて無謀すぎる。事実、大阪府の委託を受けた民間コンサルタント会社の立地調査では、万博会場として不適当の評価だった。

 それを当時の松井一郎知事が無視し、独断で予定地に決めた。そのくせ夢洲の諸問題が浮上すると、自民党に責任を押しつけ始めた。夢洲の整備に余計な費用がかかるのは、自民党が与党だった時代の大阪市がいい加減な工事をしたせいだ、というのである。

 何という厚顔無恥。これほど愚かな連中に愚かな政策を続けさせてはならない。万博は中止。カジノ誘致もやめさせよう。  (M)

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