2023年10月27日 1794号

【厚労省による負担増策動許すな 尊厳ある介護を求めて介護保険改悪を阻止しよう】

 2000年度に始まった介護保険制度は、介護支援に必要な費用の50%を市民の保険料で、残りの50%(国25%、都道府県12・5%、市町村12・5%=表1)を税金で賄っている。

 介護保険は3年に1度、保険料や給付内容などを改定する。65歳以上の1号被保険者の介護保険料の全国平均は、00年第1期2911円から21年の第8期6014円に倍増した(表2)。



 改定のたびに、給付の切り下げや負担増が行われた。15年度に要支援1・2該当者の生活支援が介護保険から外され、18年度では特別養護老人ホームの入所資格が要介護3以上に引き上げられた。現在、24年4月からの第9期に向けた改定作業が厚生労働省や自治体で行われている。

最悪の改定狙った厚労省

 第9期改定では当初、要介護1・2の生活支援を介護保険から外す、無料のケアプラン作成を有料化する、原則1割の利用料自己負担を2割に引き上げるなどが検討された。20年度のサービス利用者総数502万人、要介護1・2の利用者は226万人。要支援1・2の76万人と合わせ半分以上の利用者の生活支援を介護保険から外すことがもくろまれたのだ(表3)。

 これに対し、「史上最悪の改定だ」の声が全国でわき起こった。「尊厳ある暮らしを連絡会」も2000筆超の署名を持って昨年厚労省交渉を行った。こうした市民の力が、要介護1・2の介護保険外し、ケアプラン有料化を見送らせた。

 しかし、厚労省は、なおも(1)利用料の自己負担2割の対象者を増やす(2)原則無料の老健施設の多床室(相部屋)の室料の自己負担化など、「給付と負担の見直し」の結論を年内に出そうと検討中とされる。

 利用料の自己負担は、現在、単身では年金+その他の合計所得金額280万円以下は1割、280万円から340万円は2割、340万円以上は3割。約90%の人が1割負担となっている。これを後期高齢者医療の2割負担に合わせ、年収200万円以上を2割負担に引き上げるものだ。

 そうなれば、週2回の通所を1回に減らすなど利用抑制を余儀なくされる人が出てくる。老健施設の相部屋入所者は、室料負担とサービス利用料が増え、退所に追い込まれかねない。

 必要な介護支援がなければ、状態が悪化することは必至だ。利用を減らすことで家族負担を増やす。介護の社会化に逆行する愚策だ。

 市町村でも、介護保険料について値上げの方向で改定作業中だ。大阪市では、平均8094円の保険料が9000円ほどになると言われている。多くの高齢者の生活を圧迫する金額だ。

保険改定の山場

 この秋は、介護保険改定、保険料改定の山場だ。

 際限なく給付引き下げと負担増を繰り返してきたことで、今や「必要な介護支援を保障しない介護保険」となり、制度はすでに破綻している。保険制度ではなく、本来あるべき、国の責任で介護支援を保障する制度が必要だ。

 そうした根本的変革を展望し、当面▽わずか25%の国の負担割合を50%にさせる▽利用料2割負担対象者拡大に反対する▽老健施設などの相部屋の室料自己負担に反対する▽保険料引き上げに反対し国や自治体の補助拡充させる―などを求めなければならない。

 また、介護職の大幅賃上げを国の税金で保障させることは必須だ。40年度には69万人のヘルパーを増やす必要があるが確保は困難だ。人手不足によっても介護保険は維持できなくなる。人員確保のためには、全職種平均より月額8万円程度低い賃金(日本介護クラフトユニオン調べ)を国の負担で大幅に上げる必要がある。

改悪反対の署名を

 要介護1・2の介護保険はずしを見送らせたのは運動の力だ。多くの声が集まれば改悪阻止は可能だ。厚労省や地元自治体に、改悪反対、保険料引き上げ反対の声を集中しよう。

 「尊厳ある暮らしを連絡会」とZENKO(平和と民主主義をめざす全国交歓会)は、11月の厚労省交渉に向けて改悪反対の署名活動を開始している。ZENKOホームページでオンライン署名も可能だ。この1筆1筆が改悪阻止の力となる。
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