2023年10月27日 1794号

【松田さん「君が代」処分撤回へD-TaC8周年集会/声を上げる子どもたちに応える】

 市民団体「D-TaC(Democracy for Teachers and Children)〜『君が代』処分撤回!松田さんとともに〜」は10月5日、結成8周年集会を開き 約50人が集った。元大阪市教員松田幹雄さんは、2015年3月卒業式の「君が代」不起立不斉唱で戒告処分され、裁判で闘ってきた。今年7月27日控訴審大阪高裁の不当棄却に、松田さんはただちに上告している。支援の会D-TaCは1年間の活動を報告した。

 今年の集会テーマは「大阪の教育行政の深い闇 今こそ教育を市民の手に」。辻野けんま・大阪公立大学准教授が「久保提言はなぜ国際社会から注目されるのか〜大阪の〈教育〉行政の光と影〜」と題して講演した。辻野さんは、大阪市教育行政に異議を申し立てる提言をした元校長久保敬さんが文書訓告されたことに対し大阪弁護士会に「人権侵害救済申し立て」している運動の強力な支援者だ。

 辻野さんは、海外とのジョイントセミナー開催継続など、「久保提言」が持つ世界に響く内容に各国の学者が呼応していることを紹介。「処分するな」の要請書が幾多の市民団体から出され、処分の撤回を求める運動も粘り強く展開されていることこそ、大阪の草の根民主主義運動の確かな拡がりだと強調した。

 松田さんは上告受理申立理由書の中で、今年の小学校卒業式、中学校入学式で「君が代」を起立・斉唱しなかった中学1年生(京都市在住)から以下の意見を寄せてもらい記載している。「…第二次世界大戦時における『日の丸・君が代』の歴史的背景について何ひとつ教えられないことは、意味を知らないことと同じであると私は考えます。…教えずに『歌うことは普通である』というのは間違いです。…私はそんな国旗や国歌を見聞きするのが気持ち悪いし、しんどいです」

 こうした声を上げる生徒たちに応え、裁判闘争や、学校現場に「日の丸・君が代」の歴史を正しく教えることを要請する活動に粘り強く取り組みたいと松田さんは決意を表明した。

 参加者から「辻野さんは光と影が並立することで闇を打ち破る明るい光が自在に輝いている現実を力強く提示。お話の一つ一つに共感を覚えました」と感想が寄せられている。

(大阪・D-TaC 田中秋子)

上告で「日の丸」「君が代」の歴史を突きつける

 9月29日に上告理由書と上告受理申立理由書を提出。集会では、その報告とこれからのことを話しました。

 高裁判決については、『週刊金曜日デジタル』の記事がヤフーニュースで取り上げられました。読者コメントの多くは「『君が代』不起立するような教員はいらない」などというもの。「日の丸」「君が代」卒業式入学式の歴史がほとんど知られていないことが原因だと改めて感じました。

 今回提出した上告理由書では、「君が代」起立斉唱する行為は「慣例上の儀礼的な所作」とする最高裁判例に対して、歴史の事実から反論しています。「日の丸」に向かって「君が代」を起立斉唱する卒業式の形式が成立したのはいつか?何と、太平洋戦争直前の1930年代後半以降だったのです。総力戦のためにそれまでの尋常小学校を国民学校に変え、極端な軍国主義教育が行われた時代です。

 東京の裁判闘争での研究成果をいかし、最高裁が「慣例上の儀礼的な所作」とする行為は、天皇のために命を捨てる国民をつくる意図で始められたものだったことを明らかにしました。

 理由書は、「D-TaCブログ」の検索で見ることができます。この事実を広く伝えることで、卒業式等で「君が代」斉唱を強制することが許されないことを訴えていきます。

 10月9日には、久保元校長、辻野けんまさんたちと取り組んでいるガッツせんべい応援団集会「―人権侵害救済中間報告―情報公開でわかった衝撃の事実」を100人以上の参加で開催することができました。大阪市教育行政の異常さが暴かれてきています。10・22団結まつりでも教育交流広場を持ち、ともに闘う人の輪の拡大をめざします。

(教職員なかまユニオン・松田幹雄)



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