2023年11月10日 1796号

【DSAニックのアメリカレポート〈第5回〉/“虐殺のためにカネを出すな”/パレスチナ連帯は全国大会テーマ】

 イスラエルによるパレスチナ市民の虐殺と米政府によるイスラエル支援に対する抗議活動が連日全米で行われている。10月7日のハマス軍事作戦へのイスラエルの報復攻撃が始まってから、この問題は毎日メディアによって取り上げられている。米大手メディアやバイデン政権がイスラエルの報復攻撃を援護するような報道・発言を続ける中、市民は声を上げ、停戦を訴えている。


シアトルでも行動

 私も、直近の2週連続で、シアトルでのパレスチナ連帯集会に参加した。集会はパレスチナ連帯団体とアラブ系ディアスポラ(元の国家や民族の居住地を離れて暮らす人びと)団体が共同で主催した。DSAは主催には直接関わっていなかったが、多くのDSAメンバーが「FREE PALESTINE」と書かれたプラカードを持って参加した。他の小規模な社会主義組織を含む複数の市民団体も参加していた。

 印象に残ったのは、参加者の多くが小さな子どもを連れた家族だったこと。多くはアラビア語を話し、パレスチナ人との連帯のシンボルである黒と白のクーフィーヤ(頭や首にまとう頭巾)を身に付けていた。イスラエルによるパレスチナ人の虐殺は、遠く離れた人の問題ではなく、ここシアトルに住むアラブ系移民にも影響を与えている。

 集会はシアトル市内の公園で行われ、何人かの講演者が参加者に向けて話をした後、私たちは道路を占拠して道いっぱいに行進した。集会主催者の中には警備団、医療団など、問題が発生した時にただちに対処できるよう準備しているメンバーもいた。

 集会冒頭、私たちは叫ぶ。「警察は私たちを守ってくれない。私たちを守るのは、自分たちだ!」。子ども、高齢者のほか、ターゲットになりやすい人はデモの真ん中に入り、他の参加者はその周りを囲んで歩く。

 私たちは行進しながら声が枯れるまで叫んだ。「イスラエルの犯罪にもうカネを出すな!」「占領は犯罪だ!イスラエルはテロ国家だ!」「川から海まで、パレスチナは自由になる!」

 2回目の集会では、イスラエルの報復攻撃で殺された多くの人びとを追悼する時間が設けられた。私たちはそうした人びとをイスラエル国家の暴力の犠牲者であり、殉難者≠ニして記憶した。数分間にわたって、これら殉難者の名前が1人ずつ読み上げられ、私たちはその名前をつぶやいた。イスラエルの暴力で命を奪われた人びとを忘れてはならない。

全米でキャンペーン

 全米のDSAメンバーもパレスチナ連帯行動に参加している。DSAは全国レベルで「No Money for Massacres!」(「虐殺のためにカネを出すな!」)というキャンペーンを開始した。この活動の一部として、停戦支持を訴えるための連邦議会議員などへの電話かけ行動が連日行われている。

 ニューヨークでは、キルステン・ギリブランド上院議員(民主党)の事務所前で停戦支持を求める市民的不服従行動が展開され、DSAメンバーを含む150人以上が逮捕された。また、DSA全国労働委員会は、アメリカの労働組合内でパレスチナ連帯を訴える目的で、パレスチナ連帯小委員会を設置した。

 バイデン大統領と二大政党はイスラエルによるパレスチナ人虐殺を全面的に支持しているが、米市民は平和を求めて闘っている。シアトルの集会で私たちが叫んだように、「正義がなければ平和もない」。そして、正義とは、イスラエルの占領を終わらせることによってのみ実現される。平和のためには、停戦が実現しようとも、自由なパレスチナを求めてさらに闘い続けなければならない。

8月DSA大会に参加

 パレスチナとの連帯は、今年8月に開催されたDSA全国大会の主要テーマの一つでもあった。

 DSA全国大会は隔年で開催され、組織の最高意思決定機関である。大会では、地方支部から選出された代議員が決議案について討論し、賛否を投票し、DSAの最高選出機関である全国政治委員会の新しいメンバーを選出する。今年の大会は8月4〜6日、イリノイ州シカゴ市で開催された。

 全国の支部から約1千人の代表者が集まり、2日半をかけて今後2年間の組織の方向性を民主的に決定した。各支部には、支部メンバー75人ごとに1人の代表者が割り当てられる。私はワシントン州スノホミッシュ郡支部から3人の代議員の1人として選出された。

 大会が正式に始まる前から、大会の準備はすでに始まっていた。DSAはビッグ・テント¢g織である。これは、様々なイデオロギーや政治戦略を持つメンバーが「民主主義的社会主義」の名の下で一つの団体として共に活動をする、ということを意味する。

 だから、DSAの中には、複数のコーカス(特定のイデオロギーや政治戦略で合意して集まる会議)が存在し、各コーカスから様々な決議案や全国政治委員会への候補者が出される。そのため、議題に全体が同意すること自体、困難なプロセスであるが、私たちは民主的に行う。

 大会の議題には、メンバーが提出した決議案、国際委員会などさまざまな全国レベルの委員会から提出された「合意決議案」、全国政治委員会から提出された決議案、およびこれらの決議に対するさまざまな修正案が含まれていた。

 最終的に、大会の主要なテーマは次の通りだった。(1)DSAの民主化と組織化(2)DSAと民主党との関係性、そして独立政党設立への方向性(3)パレスチナおよびBDS運動(イスラエル国家や企業のボイコット、投資撤退、制裁を求め、パレスチナの自由を求める運動)との連帯(4)トランスジェンダーの権利や人工妊娠中絶の権利を求める全国キャンペーンの実施。

  *  *  *

 2日半の議論の結果、DSAはよりまとまりのある強い組織になった。様々な意見を持つメンバーが集まった組織だが、今回の大会を経て明確になったのは、DSAは団結しており、政治組織として成長していることだ。全国大会の結果についてのより詳細な内容は次回レポートで。《続く》





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