2023年11月17日 1797号

【イスラエルによるガザ攻撃/民族浄化を狙った国家テロ/問題の根源は占領にある】

 パレスチナ自治区ガザ地区に対するイスラエルの軍事侵攻が続いている。これは「自衛権の行使」などではない。一般市民を標的にした国家テロだ。世界ではイスラエル非難の声が高まっているが、日本国内ではいまだに「どっちもどっち」論がはびこっている。

難民キャンプを空爆

 イスラエル軍がガザ地区北部のジャバリヤ難民キャンプを空爆した。ジャバリヤは1948年のイスラエル「建国」時に難民となったパレスチナ人らが暮らすガザ地区最大の難民キャンプ。今回の戦闘前までは約11万6千人が暮らしていた。そんな人口密集地区を爆撃すれば、多くの死傷者が出るのは当然だ。

 攻撃の瞬間を目撃したという男性は米CNNの取材にこう語った。「パンを買う行列に並んでいたところ、いきなり何の予告もなく7〜8発のミサイルが落ちてきた。地面に大きな穴ができ、バラバラになった遺体の断片がそこら中にあった。世界の終わりのようだ」

 イスラエル軍の報道官は、難民キャンプへの空爆はイスラム組織ハマスの司令官を狙ったもので、「明確な軍事的必要性」があったと主張した。子どもを含む民間人が死傷したことを指摘されると、「これが戦争の悲劇だ」と述べ、南部への移動を促した。

 しかしイスラエル軍は南部への道をふさぎ、避難する人びとを標的にしている。家族とともに避難中に攻撃を受け2人の子どもが負傷したという男性は「国連の旗があるバスなのに砲撃されたんです」と証言する。

 住民の命を脅かしているのは空爆や地上攻撃だけではない。イスラエルはガザを完全に包囲し、食料、燃料、水、電力の供給を遮断した。このため衛生状態が急速に悪化。医療機関も機能マヒに陥り、助けられるはずの命が次々に失われている。国連児童基金(ユニセフ)の報道官は「ガザは数千人の子どもたちの墓場と化している。それ以外の人びとにとっては生き地獄だ」と述べた。

封鎖自体が虐殺

 ガザの惨状はハマスの奇襲攻撃(10/7)を発端とするものではない。パレスチナ自治政府の選挙でハマスが勝利したことを受け、イスラエルは2007年からガザを封鎖。この地で暮らす約220万人を閉じ込めている。国際法違反の「集団懲罰」にあたる行為だが、イスラエルは例によって無視し続けた。

 また、度重なる空爆で住民の生活基盤を破壊。ガザの経済を破綻させた。こうした事態をイスラエルの歴史家イラン・パペは「漸進的なジェノサイド」と表現する。国連のグテーレス事務総長がハマスによる民間人攻撃・拉致を批判しつつ、「理由もなく起きたわけではないことを認識することも重要だ」と指摘したのは、このような歴史的背景があるからだ。問題の根源は70年以上に及ぶイスラエルの軍事占領なのである。

欧米日の二重基準

 ガザの全住民をシナイ半島(エジプト)の砂漠地帯に集団追放する計画をイスラエル情報省が検討していることが明らかになった。同国政府は「仮定の議論にすぎない」と弁明したが、そうした政策文書の存在自体は認めている。

 イスラエル史上最右翼と評される現政権なら考えそうなことである。首相のベンヤミン・ネタニヤフは右派政党リクードの党首だ。昨年12月に第6次政権を発足させた際、彼が連立相手に選んだのは極右の「宗教シオニスト党」や反アラブ主義を掲げる「ユダヤの力」などであった。

 彼らは「大イスラエル主義」に凝り固まった連中であり、パレスチナ国家の独立・平和共存など微塵(みじん)も考えていない。実際、宗教シオニスト党の党首であるスモトリッチ財務相は「パレスチナ人など存在しない」といった暴言を連発。国際法違反であるヨルダン川西岸地区への入植活動をいっそう強めている。

 米国を始めとする欧米諸国はロシアによるウクライナ侵攻を非難し、ウクライナには武器も資金も支援する。ところが、パレスチナ問題では「占領する側」のイスラエルを支持・支援し続けている(時折り人道的な配慮を申し訳程度に口にするが)。これが二重基準でなくて何であろう。

 日本政府もイスラエル支持の立場だが、それは米国政府への追従だけが原因ではない。第二次安倍政権の発足以降、日本はイスラエルと急接近しており、とりわけ兵器の共同研究・開発といった軍事面でのつながりが強まっていることが背景にある。

 こうした事実を日本のメディアはほとんど伝えず、傍観者的な「戦局解説」を続けてきた。「どっちもどっち」論がはびこり、即時停戦・封鎖解除を求める世論の広がりを妨げているのは、このせいだと言っても過言ではない。  (M)

MDSホームページに戻る   週刊MDSトップに戻る
Copyright Weekly MDS