2023年12月01日 1799号

【イスラエル 明白な国際法違反/生きる望み断つ病院攻撃/若者に広がる“虐殺やめろ”の声】

 イスラエル軍によるガザ大虐殺が続いている。「北部を掌握した」と宣言するや南部への本格的侵攻を準備している。病院を攻撃するなど明白な国際法違反だ。この蛮行に最大の支援をおくっているのが米政府であり、それに追随するEUや日本の政府だ。全世界から、イスラエルに、親イスラエル政府に「即時停戦、虐殺やめろ、占領やめろ」の声を集中しよう。


「ハマス解体」はパレスチナ人追放のため

 イスラエル軍はガザ地区最大のシファ病院を攻撃、機能停止に追い込んだ。その結果、11月16日までの6日間で未熟児3人を含む患者40人余が死んでいる。イスラエル軍は「司令部があった」「人質の遺体があった」などハマスの軍事拠点だったと説明し、病院襲撃を正当化しているが、病院関係者は全否定している。

 日本赤十字社からガザ北部のアルクッズ病院に派遣されていた看護師は帰国後の記者会見で「約400人の患者と約1万4000人の避難民がいた。11月12日、燃料がつき、医療機能が停止した」と語り、ハマスの軍事施設の存在について「考えることすらできない」と否定している(11/17)。

 イスラエル軍はパレスチナの医療体制を完全に破壊した。パレスチナ保健省は11月17日、ガザ地区にある35の病院のうち26病院が爆撃や燃料不足で閉鎖したと発表した。72か所ある一次診療所も52か所が閉鎖になった。西岸地区でもジェニンの病院スタッフが退去させられ、医療行為ができなくなった。



 イスラエル軍は、「地上作戦は新たな段階に入る」と宣言し、ガザ南部への攻撃も始めた。11月15日には、南部最大都市ハンユニスで避難を命じるビラを配布し、18日には砲撃。少なくとも26人(大半が子ども)以上を殺している。

 イスラエルのガラント国防相が「どこにいようとハマスを解体する」(11/14)とあらためて強調したが、その意味するところはガザ市民を消滅させることだ。かつて、イスラエル建国時に、アラブ人のデイル・ヤシーン村をユダヤ人武装組織が襲撃し、無抵抗の村民を虐殺する事件が起きた。アラブ人の民族浄化≠狙う「ダレット計画」の一環だった。今また、同じことを行おうとしているのだ。

バイデン追いつめるZ世代の抗議行動

 このようなイスラエル軍の蛮行を非難しないどころか、支援さえしている筆頭が米政府だ。米政府は、1948年のイスラエル建国以来、22年までに1580億ドル(約23兆円)以上の突出した援助をして来た。特にバイデン大統領は「シオニスト」を自称している。ガザ侵攻にあたって、既に攻撃ヘリコプタ―用のミサイル、バンカーバスター(地中貫通爆弾)、クラスター爆弾などをおくった。この上、140億ドルの軍事支援を表明している。

 しかし、こうしたイスラエル一辺倒の政治姿勢に抗議の声が大きくなってきている。米国の世論調査によれば、民主党支持者層では今年3月、初めてイスラエルよりもパレスチナに共感する割合が上回った。10月の戦闘開始後は、「停戦を呼び掛けるべき」が66%、11月には68%と7割近くになった。イスラエルを支援すべきの声は、10月41%、11月32%へと下がっている(ロイター等調査)。

 特に、Z世代と言われる25歳以下の若者層や非白人層ではパレスチナへの共感が広がっているという(11/5「47ニュース」)。「ガザの人びとは声をあげることもできず、私たちが代弁者にならなければ」(ワシントン、ハワード大学学生)。「若いアメリカ人は人権や正義に強い関心がある。政治変化を起こす力を持っていると思う」(20代大学生)。

 若者層への浸透を阻止しようとする親イスラエル側の巻き返しもある。ハーバード大学やスタンフォード大学、ニュヨーク大学などでは、パレスチナ支持を表明した学生の就職内定取り消しや脅迫行為が起きている(10/18AFP)。イスラエルのバラカト経済産業相は「反ユダヤ主義対策を怠る学校は大きな代償を支払うことになる」と言い、「アイビーリーグ(米名門私立大8校)などの資金提供者の間で、寄付を控える動きが増えるだろう」と大学関係者を脅している。

 それだけ、影響が大きいということだ。こうした圧力にもかかわらず、デモや集会、座り込みに参加する若者たちが増えている。来年の大統領選挙へも大きな影響を与えることは間違いない。


イスラエル擁護の政府を孤立させよう

 国連安全保障理事会で11月15日、「人道的休止」を求める決議がやっと採択された。10月27日の国連総会決議で反対した米国、英国は「ハマス批判がない」との理由をあげながら、拒否権行使はできず、棄権した。非常任理事国の日本も国連総会では「棄権」したが、これには賛成した。イスラエルへの批判の高まりの中で、あからさまな擁護はできなくなってきているのだ。一層孤立化させる時だ。

 世界各地で「ガザ虐殺をやめろ」の声が広がっている。英国や米国などで数十万人規模のデモが繰り返されている。11月16日(木)には、スペイン全土40都市で2回目の学生ストライキが行われた。EUでは、執行機関にあたる欧州委員会が10月9日にパレスチナ支援金の支払いを止めたことに、スペイン、ポルトガルが批判。すぐに撤回された。親イスラエルの姿勢を示すフォンデアライエン欧州委員長にEU職員が抗議文を突きつけている。市民の抗議行動が政権に影響を与えているのだ。

 日本政府はどうか。イスラエルの蛮行を「自国民を守る権利」として擁護している。病院を破壊し、イスラエル人犠牲者の10倍以上ものガザ市民を虐殺していてもだ。岸田文雄首相は訪問先の米サンフランシスコでバイデン大統領と会談。「米国の外交努力を高く評価する」と伝え、日米一体を強調した(11/16)。

 日本でも、連日のごとく抗議行動が行われている。内閣支持率はわずか21・3%(11/16時事)だ。イスラエル擁護をやめよと政府に圧力をかけよう。軍拡に反対し、平和と民主主義、自由を求める声を一つにしよう。

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