2023年12月01日 1799号

【ミリタリー/若者たちの人権 平和感覚/パレスチナ連帯でも声】

 イスラエル軍による「ガザ住民皆殺し」作戦に対し、世界では「虐殺やめろ!」「即時停戦」を求める声と行動が大きく高まっている。

 「ハマスは恐ろしい罪を犯したが、それでもガザへの無差別攻撃に反対する。この土地に住むすべての人に、安全で自由に暮らす権利がある」。イスラエル国内のNGO「沈黙を破る」の声明だ。暴力でパレスチナを支配する軍務を自ら経験し祖国の主張に疑問を抱いた元兵士らの団体で、ハマスの奇襲攻撃に国内が激高する中、ただちに発した。彼らの声は決して小さくない。イスラエルメディアの世論調査で「速やかに侵攻すべき」と考える人が3割を切っている(10/27イスラエル・マーリブ紙)ことを見ても、変化は確実に表れている。

社会構造に目を向ける

 常にイスラエル政府の後ろ盾となってきた米国でも、「民主党支持の若者を中心に、パレスチナへの同情が高まっている」(11/2毎日)など明らかな変化が起きている。三牧聖子・同志社大学大学院准教授は「若者たちは、黒人への差別や暴力に抗議する『ブラック・ライブズ・マター(BLM、黒人の命を軽んじるな)』運動への参加などを通じ、『構造的な差別』に目を向ける姿勢を自然と身に付けてきた。テロや紛争が起きたときも、その原因を生んだ(社会)構造や背景に目を向けます」とその背景と理由をあげる。

 さて、日本の若者はどうか。8月15日放送のNHKスペシャル「Z世代と“戦争”」を見て意外≠ネ事実に新鮮な驚きを感じた。麻生副総裁が台北で講演し、中国を念頭に「戦う覚悟」を強調するなど、露・ウクライナ戦争に乗じ、「台湾有事」を煽りながら「防衛力強化」へ世論を誘導することに全力を傾けていた時のことである。若者を中心に、番組が事前に行ったアンケート調査をもとにすすめられた討論番組だ。

新たな政治意識に希望

 調査結果で注目したのは、「もしも日本が戦争に巻き込まれたらどうするか?」への回答である。「戦闘に参加せず戦争反対の声を上げる」が36%と最多。「戦闘に参加せず国外に逃げる」は21%、「戦闘には参加しないが戦いを支持する活動に参加する」は10%、「戦闘に参加する」は5%、「わからない/答えたくない」は22%であった。

 世界の若者は、旧態依然とした古い国家の枠内ではなく、国家の枠を超えた人権や平和に基づく新たな政治意識を獲得しつつあるのかもしれない。

 欧米だけでなく、日本でも「ガザ攻撃に学生ら抗議、渋谷 『今すぐ虐殺止めて』」(11/12共同通信)との報道がみられるようになった。世界の若者のこうした人権、平和感覚に新たな希望がわきあがってくる。

豆多 敏紀
平和と生活をむすぶ会
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