2023年12月01日 1799号

【自分らしくいられる居場所 フリースペースたんぽぽ 不登校の子の学びと健康の保障を】

 文部科学省は8月、不登校の児童生徒を対象にした「不登校特例校」の名称を「学びの多様化学校」に変更し、増設を目指す施策を発表した。

学校が変わってほしい

 横浜市鶴見区のNPO法人「フリースペースたんぽぽ」理事の一之瀬百樹さんは「不登校の子どもに文科省の施策が対応できていない」と嘆く。そして「学校生活になじめない子どもを別の場所に押し込む分離教育ではなく、今の学校が子どもたちの多様性を包み込む教育に変わってほしい」と語る。

 2022年度の小中学校の不登校児童生徒数は前年度比22%増の約30万人。「たんぽぽ」はそんな子どもたちが自分らしくいられる∞安心していられる°緒齒鰍セ。現在14人が登録している。

 「たんぽぽ」では自分がしたいことをする。絵を描く、ゲームで遊ぶ、将棋、読書…。勉強する子もいる。みんなで楽しく遊ぶ「ゆるっとゲームくらぶ」の時間もある。「ゲームの内容は子どもたちで決めてもらう。こちらが何をやろうとは言わない。参加しない自由も」―卒業生スタッフのみのりさん(25歳)、けんさん(24歳)、みっちーさん(22歳)は、個人を尊重するコミュニケーションの大切さを語る。「ゲームくらぶ」の場は、子どもと大人の楽しい会話で埋め尽くされる。

 けんさんは、子どもたちが「たんぽぽ」に居心地のよさ≠感じて通い続ける理由を「縛られてないから」と話した。みっちーさんは「同じような施設に行ったけれど、『一緒にやろう』と誘われる機会が多くてなじめなかった」と「たんぽぽ」の自由にしていい≠ニいう理念がしっくりきた自身の体験を語る。みのりさんは「学校に戻すための場所ではないから」と分析する。

 学校生活に窮屈さを感じた子どもたちには、「ここにいていいよ」というメッセージが心に響いた。三人は、「のびのびできる」「落ち着ける場所」「人間として成長できた」と「たんぽぽ」の存在を表現した。

施策求める署名広げる

 「たんぽぽ」は開設から15年。できるだけ家庭に費用負担をかけないように運営してきた。行政は善意≠ノ任せたままだ。支援はまだまだ足りていない。

 一之瀬さんは特に、学校に通えない子どもたちの健康を危ぶむ。保護者も悲鳴を上げている。フリースクールなどの費用や交通費、昼食代の出費に苦労する中、さらに自費で健康診断を外部で受けるのでは、たまったものではない。

 視力の低下や虫歯、体力の低下は、なかなか気づかない。まして心電図はどこで、どのくらいの費用で測ってくれるのか。不安は尽きない。行政に要請しても「学校で行う健康診断の日に受診してください」とにべもない。

 「たんぽぽ」と親の会(うてなの会)は、「不登校の子どもの学びと健康を保障するための施策を求める要望署名」を始めた。不登校の子が学校外の場所で健康診断を受けられる環境整備、保護者負担費用を軽減する補助、「たんぽぽ」のような居場所への経済的支援。この三つを神奈川県知事と横浜市長に求める。

 理事長の青島美千代さんは「教育全般にもっとお金を出してほしい」と願う。

■署名用紙は「フリースペースたんぽぽ」のホームページからダウンロードできます。



MDSホームページに戻る   週刊MDSトップに戻る
Copyright Weekly MDS