2023年12月01日 1799号

【維新支持者も見放した/大阪万博、「不要だ」が7割/橋下の詐欺的擁護も空振り】

 始まる前から大失敗確定と言われている大阪・関西万博。中止を求める声は日増しに高まっており、大阪を地盤とする日本維新の会の支持層でさえ「不要」論が圧倒的だ。それでも詭弁を弄して万博開催の意義を説く者がいる。維新の創業者・橋下徹その人だ。

一人1万9千円

 「大阪市民の負担額は1人あたり約1万9千円。4人家族だと一家で7万6千円になります」

 大阪・関西万博の会場建設費にかかる大阪市民の負担額が明らかにされた。11月14日に行われた大阪市議会の万博推進特別委員会において府市合同の万博推進局が公表したもので、積算根拠は以下のとおり。

 会場建設費の2350億円は、国、大阪府市、経済界が3等分して負担する。大阪市の負担分は2350億円の6分の1だから約392億円。これを市の推計人口約277万人で割ると、1人あたり約1万4千円になる。大阪市民は府民でもあり国民でもあることから、府民負担の約4千円と国民負担の約600円が加わり、合計約1万9千円になるという計算だ。

 横山英幸市長は「市民の追加負担を重く受け止めている。(予算の)執行確認が不十分だったことをおわびする」と陳謝。「2兆円とされる経済波及効果や万博の意義を広く発信していく」と理解を求めた。

 もちろん、それで納得するほど世間は甘くない。共同通信の世論調査(11/3〜11/5実施)によると、大阪・関西万博開催について「不要だ」との回答は68・6%に達し、「必要だ」28・3%を大きく上回った。万博を推進してきた「維新」の支持層でも「不要だ」が65・7%で、「必要だ」33・1%を圧倒した。

 万博批判の高まりは維新の党勢に直結している。本拠地・大阪周辺の首長選で公認候補が相次ぎ落選。幹部からは「選挙戦と万博問題を関連づけられれば、戦いにくい」との声が漏れているという(11/14読売)。万博のせいで維新の看板である「身を切る改革」の嘘が通用しなくなっているということだろう。

カジノにはだんまり

 マスメディアの論調も変化し、万博中止や延期論が公然と語られるようになった。そうした逆風の中でも万博開催の意義を声高に語る者がいる。自称「万博の言い出しっぺ」こと橋下徹(維新創業者で元大阪府知事・市長)である。

 横山市長の陳謝を受けて更新した自身のX(旧ツイッター)では、「負担以上の経済効果を考えれば謝る必要はない」と主張。出演したテレビ番組では「3兆とか4兆の経済効果を叩き出す投資であり、費用ばかりを抑える議論にしないほうがいい」と語った。

 さらに「お祭りじゃない。パビリオンもしょぼくていい」と開き直り、「少子高齢化時代の課題解決策を提案する万博」が本来の姿なのだと強調した。それなら高額の入場料をとる必要も、不便な埋立地(夢洲)で行う必要はないはずだが、それには触れないところが橋下流の詭弁術だ。

 思わず耳を疑う発言もあった。会場建設費を押し上げる一因となっている木製の大屋根建設を擁護した際に「単純な無駄ではなく芸術的な価値もある」と言い放ったのだ。府知事や市長時代に文化・芸術関連の予算を削りまくったのはどこの誰なのか。厚顔無恥もはなはだしい。

 橋下最大の嘘は「カジノの隠ぺい」である。維新にとって夢洲での万博開催は同地へのカジノの誘致と一体のもの。民間事業者では実施困難な夢洲のインフラ整備に巨額の公費をつぎ込むことを正当化する隠れ蓑なのだ。

 そのことに橋下や維新の現役幹部はだんまりを決め込んでいる。世間が騒ぎ出せば、万博・カジノの命取りになりかねないと認識しているのだろう。

経済成長に根拠なし

 そもそも、万博のような「国家的イベント」を打ち上げて経済成長を図るという発想が間違いだ。いわゆる祝賀資本主義の幻想にとらわれている。

 一橋大の鵜飼哲名誉教授は「五輪や万博があったから経済成長できたのではなく、経済成長の時に五輪や万博を開催していたに過ぎない。なのに万博や五輪をやれば成長できるという根拠のない想定で、成功体験にすがっている」(11/10東京新聞)と指摘する。

 いま大阪・関西万博を中止すれば最大350億円の補償金が必要になるという。奇しくも大屋根の建設費用とほぼ同じ額だ。

 世論の反対を受けて、万博規模の博覧会を中止した先例はある。1996年に東京で行われるはずだった世界都市博の中止だ。開幕1年前、当時の青島幸男知事の政治決断だった。取り返しのつかないことになる前に、万博もカジノもやめるべきだ。    (M)

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