2023年12月08日 1800号

【コアネット 50年の債務押しつける インド新幹線ODA 現地と連帯し外務省交渉】

 コアネット(戦略ODAと原発輸出に反対する市民アクション)は11月17日、インド新幹線事業に関する外務省・JICA(国際協力機構)交渉をおこなった。

 これは、インド西部のムンバイ―アーメダバード間約500`に高速鉄道を建設する事業で「アベノミクス第3の矢―成長戦略」の一つである「インフラシステム輸出の旗艦事業」とされた。事業費(用地取得費などはインド政府)の81%をODAで供与する円借款事業(利率0・1%、償還期間50年)。車両は、JR東日本E5系新幹線と同型を輸出するいわゆるタイド(ひも付き)借款である。

 現在、当初計画の「2023年12月開業」が大幅に遅延し、本開業は2027年以降と報道され、事業体であるインド高速鉄道公社と日印両政府は、開業年を公表していない。遅延の原因は、「コロナ禍」だけではなく、用地の取得をめぐる住民同意が取れなかった(裁判もあった)ことや環境を無視した計画に反対する住民運動が背景にある。

 同時に、路線設計変更や土壌対策などに多額を要した結果、事業費は当初金額の1・8兆円を上回る3兆円規模に膨張している。この借款契約を適用すると2兆4千億円を日本側が貸し出すことになる。巨額の借款供与が国会同意もなく実行されようとしている。

 貧困層は高額運賃の新幹線は利用できない。一方、借款返済にかかる債務を50年にわたり強いられる。

 さらに昨年、並行する在来線に準高速列車が運行を開始。2015年計画で算出した新幹線利用者数が減少することが想定され、採算性にも疑問が生じている。

非公表に終始の外務省

 交渉ではこうした点を追及したが、外務省とJICAは、理由も述べず「非公表」との回答に終始した。

 今年7月、来日した環境活動家クリシュナカントさんは、現地で生起している問題について(1)2019年、住民の申し立てに応じて、JICAインド事務所が現地を訪問した際の報告書を開示せよ(2)買収した土地の「実がならない」とされた樹木に対する補償がない(3)盛土により降雨後の表層水が農地に流れ込み、作物被害を受けている(4)環境配慮等のインド国内法が遵守されていないと訴えた。

 この際、JICA担当者は「改善に向け、インド高速鉄道公社にプッシュする」と回答したが、今回交渉では「補償金支払いを確認済み」「対応策実施済み」と不誠実な回答に終始した。

 コアネットは、この事業がODAの問題を象徴していると捉え、省庁交渉、情報公開等に取り組んできた。今後もインドの人びとと連帯して運動を進めていく。

(コアネット・三ツ林安治)



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