2023年12月08日 1800号

【UAW 全米自動車ストライキでかちとった 25%賃上げと差別賃金廃止 臨時労働者の正社員化も】

 9月15日から全米で開始されたフォード、ステランティス、GMに対する全米自動車労働組合(UAW)のストライキ闘争は、6週間後、3社すべてで新労働協約の暫定合意に達した。

 新協約では、ビッグ3が賃下げのために設けた多くの賃金階層制が廃止される。その結果、賃金が2倍以上になる労働者もいる。

 これは、UAWの大胆かつ積極的な闘いの勝利である。10月下旬、UAWは、フォードとステランティスとの暫定合意を発表し、同30日、最後の抵抗勢力であったGMと暫定合意。いずれもストライキの拡大強化の中で、ビッグ3を1社ずつ屈服させていったのだ。

底辺への競争≠ノノー

 3社のUAW組合員14万6千人が今後、集約投票するが、賛成多数といわれる。

 協約には、即時の11%を含む4年半にわたる25%の賃上げが含まれた。目標であった生活費調整も復活する。これを合わせると、2028年の協約終了時までに、製造労働者の最高賃金は現在の時給32・05j(約4800円)から42・60jに、技能労働者は50jを超える。初任給は同18・05jから28jに引き上げられる。

 最高賃金に到達するまでの期間は、従来の8年から3年に。現在昇給中の組合員は、20%から46%の昇給を即座に受けることになる。

 過去20年間、ビッグ3は派遣労働者などを低賃金で何年も働かせてきたが、勤続90日以上の臨時労働者は直ちに正社員に転換される。今後採用される臨時雇用者は9か月後に正社員になる。

 UAWとステランティスの交渉での大きな争点のひとつは、ステランティスが今年初めに休止させ、労働者1200人の他工場への分散を余儀なくさせたイリノイ州ベルビディア組立工場の問題だった。新しい協約によって、同社は中型トラックを生産するために2シフトの雇用を約束。また、新バッテリー工場で1千人の雇用を増やす予定で、協約終了までにさらに5千人の雇用を増やす。

 GM子会社の労働者は現在、別の不利な契約の下で働いていたが、今後はGM基本協約の下で働くことになる。GMは近年、いくつかの工場で倉庫や資材運搬の仕事を賃金の低い子会社にシフトしており、組合は電気自動車への移行を利用してさらに多くの種類の仕事を子会社にシフトすることを懸念していた。今回の合意は、こうした底辺への競争≠ノ終止符を打つ。

職場からの闘いの力で

 この新協約は2028年4月30日に満了する。フェイン委員長は「億万長者層に真に立ち向かい、経済を少数ではなく多数の利益のために機能させるために再構築するには、自分たちがストライキを行うだけでなく、みんなが共にストライキを行うことが重要だ」と語る。想定される同年5月1日のストライキを他の労働組合とともに闘い、今回実現しなかった「週40時間賃金での週32時間労働」実現を目指すと宣言した。

 さらにUAWは、テスラ、トヨタ、フォルクスワーゲン、メルセデス、BMW、ホンダ、日産などで組合の組織化を進める。フェインは「2028年に交渉のテーブルに戻るときは、ビッグ3だけでなく、ビッグ5やビッグ6との交渉になるだろう」と言う。

 今、華々しい成果を勝ち取ったUAWだが、これまで資本側に立つ管理コーカス(活動家グループ)の支配の中で何十年と妥協を強いられ続けてきた。しかし、民主的活動家の職場での粘り強い活動でフェインを僅差で委員長に就任させた。ストライキにはビッグ3の約3分の1の組合員が参加。ストに参加していない組合員も、毎日残業拒否を継続し闘いに加わった。

 UAW以外の組合や、DSA(アメリカ民主主義的社会主義者)をはじめ市民団体もストライキを支援した。フェインたちはこうした内容を土曜日夜のフェイスブックライブを通じて意思統一し5万人が視聴した。

 運動の局面をみなが共有し、職場で管理者にノーを突きつける粘り強い闘いがこの勝利の鍵だった。日本でも労働者の連帯を強化し、職場から闘う力を、闘う労働組合を創り出していこう。



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