2023年12月08日 1800号

【軍事協力強める岸田政権―マルコス政権 戦争でなく平和と福祉へ 日本・フィリピン民衆連帯を】

 11月3〜4日、岸田首相がマニラを訪問しマルコス・フィリピン大統領と会談した。首相は4日、フィリピン議会で演説。「自由で開かれたインド太平洋」を守るとして、今年創設した「政府安全保障能力強化支援(OSA)による世界で最初の協力案件でフィリピン軍への沿岸監視レーダー供与に合意」と表明した。

軍事支援OSAを初適用

 日本はすでにODA(政府開発援助)を使い2014年には「沿岸警備通信システム強化計画」で総額約12億円の無償資金協力。16年からフィリピン沿岸警備隊海上安全対応能力強化事業として40b級巡視船10隻、2021年には多目的対応船2隻を供与した。そして今回、監視レーダー5基、約6億円に相当する「防衛(軍事)装備品」などを無償で提供するとしたものだ。フィリピンはOSAによる初の支援国となる。

 日本政府は南シナ海(西フィリピン海)でのフィリピンと中国の対峙を利用しながら、援助を餌に安全利用の名でカモフラージュし、軍事協力への足掛かりを着々と築いている。

 また、マルコス大統領との間で「日比部隊間協力円滑化協定」の正式交渉の開始を合意。この協定が締結されれば、軍隊の相互派遣が可能になる。自衛隊が南シナ海での共同哨戒や軍事演習などの活動をすることができるということだ。

 フィリピンのインディペンデント紙は「岸田政権は、自衛のみの原則から大きく転換し、反撃能力を含む安全保障と防衛を強化する計画を発表」と指摘。元日本軍性奴隷の支援団体リラ・ピリピーナは「第二次大戦ではフィリピン人の子どもや家族が殺害され、虐待を受けた。正義を求める叫びはまだ報われていない。この軍事協力は、大戦の暗い記憶の傷口を開いただけだ」と抗議の声を上げた。

現マルコス政権の軍事化

 現マルコス大統領は、1986年の民主化革命でフィリピンを追われた独裁者、マルコス大統領(当時)の息子だ。革命後フィリピンは同年、新憲法を定めて米国との基地協定は失効し、米軍は92年フィリピンから撤退した。しかし米軍はその後2014年防衛協力強化協定(EDCA)に基づき、5か所の基地を限定的に使用。今年2月には、現マルコス大統領の下で新たに4か所の基地の使用権を米軍に与えている。

 財閥や大企業の支援を受けるマルコス政権は、23年度には前年度比8%増の約2400億ペソ(約6500億円)の莫大な国防予算を要求している。また、前ドゥテルテ政権以来のマスコミや人権活動家への厳しい弾圧を続けている。

地域から平和を築く

 こうした状況の中、23ZENKO(平和と民主主義をめざす全国交歓会)にオンライン参加した貧困地域の教育施設アバカダ主宰者で平和音楽活動家ポール・ガランさんらは、軍事費ではなく福祉を、と呼びかける活動を地域から作り上げている(ガラン親子が作った歌が『平和な世界』)。現在、教育や福祉施設の充実などを求め、地域レベルの「平和条例」制定に住民と共に取り組んでいる。11月18日にはアバカダ創立35周年の記念式典で、地域の親子と共に、ウクライナやガザの平和を求め、世界中の軍拡の流れに抗議してピースウォークを行った。

 日本から支援を続けるフィリピンAKAY(アカイ)プロジェクトをともに創る会(AKAY)メンバーは、「子どもたちの望むものは銃剣でなく豊かな世界」と『平和な世界』を歌いながら沖縄辺野古のパネル展示など週1街頭行動(西宮市)や、「武器はいらない!めしだ!」毎月デモ(京都)など、ガランさんの活動と連帯し、地域の活動に取り組む。

 日本を戦争する国にさせない!ウクライナ戦争、ガザ侵攻に反対!の声を共に地域からあげていきたい。

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 11月18日、アバカダは創立35周年を迎え、25日には子どもの権利のためのコンサートを開催。これらは12月にユーチューブで配信される。ぜひご覧ください。

◆問い合わせ先:kobukefam@jcom.zaq.ne.jp

(AKAY・中條千尋)





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