2023年12月15日 1801号

【読書室/子どもを壊す食の闇/山田正彦著/河出新書/870円(税込957円)/市民の力で安全を取り戻す】

 世界的農薬企業のモンサント社(現在バイエル社)が開発した除草剤には発がん性のあるグリサホートが含まれており、2020年には世界49か国で使用が禁止されている。ところが日本では2017年に輸入農作物のグリホサートの残留基準を大幅に緩和した。こうした農薬を多く使用するアメリカ、カナダの農作物輸入拡大のためだ。

 遺伝子組み換えの大豆やトウモロコシなどを原材料とする食品には本来その表示義務がある。だが加工食品群330品目中、実際に義務があるのが33品目のみ。醤油や植物油などには表示義務がない。すべての加工食品に義務を課しているEUなどとは対照的だ。同様に危険とされるゲノム編集でも日本は先進国≠セ。アミノ酸を多く含んだギャバ(トマトの変種)、肉厚のマダイ、巨大なトラフグなどが多国籍アグリ企業の手でつくられ、学校給食にまで使用されている。

 2022年3月、消費者庁は「化学調味料不使用」「無添加」などの表示を禁止した。消費者は無添加の食品とそうでないものの区別がつかなくなり、有利になるのは添加物を多く使用する大手食品企業である。知らず知らずに危険な食品が摂取され、子どもの発達障害やアレルギー増加の一因にまでなっていることを著者は指摘する。

 対案は、自治体が地域産のオーガニック食材を購入し、安全な給食を無償で提供することだ。海外では有機農法を進める農民運動が広がり、ソウル市やブラジル、フランスなどで学校給食の改革が進められた。日本でも、市民の力で食の安全を取り戻す地域の取り組みが始まっていることを本書は紹介している。(N)
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