2023年12月22日 1802号

【「ノーモア沖縄戦の会」新垣邦雄さんが語る沖縄戦・若者・未来(上)/「知ること、発言し行動することを伝えたい」/ 11・23県民平和大集会(3)】

 11月23日の県民平和大集会の準備に携わった新垣邦雄さん(ノーモア沖縄戦 命(ぬち)どぅ宝の会・事務局長)に沖縄の若者の変化と希望を聞いた。(まとめは編集部)

沖縄戦の記憶と継承

 私は「ノーモア沖縄戦の会」で、『沖縄戦前新聞』という地元2紙の記事ピックアップを続けています。日々、基地問題が埋めます。

 「慰霊の日」の6月23日前後に山ほど「慰霊」「平和学習」の記事が載ります。小中高、地域ごとに、県内隅々でのさまざまな活動が記事になっています。

 沖縄戦の記憶の継承は、いまの子どもたちにも引き継がれているので、反戦運動の基盤となっています。記憶の継承の堆積と密度は、若い世代にまで引き継がれていると思います。

 それはやはり、他府県にない沖縄の特色です。

ミサイル配備を問えば

 戦争の記憶の風化も確かに進んでいます。それでも集合的無意識的≠ネ反戦の思いは根強いと思います。

 今年6月、摩文仁(まぶに)の戦没者追悼式典で、私たちは「ミサイル配備 賛成か反対か」のシール投票をしました。結果は賛成4票(3人は他府県人、1人は沖縄の少年)、反対は724票と圧勝でした。

 年配者はもとより、高校生や大学生のグループ、家族など、積極的に反対の意志表示をしていたのが印象的です。普段口にしなくても、反戦反基地の思いは根強いと実感しました。

沖縄を生きる若者の感性

 会の共同代表ダグラス・ラミスさんの「シュプレヒコール、拳(こぶし)突き上げは、かえって参加のバリケード」との話のとおり、沖縄の若い世代は反戦運動を敬遠している面もあります。

 若者参加は大きな課題ですが、そんな中で若者が運動に参加する動きは、希望につながります。

 今年の慰霊月の6月から終戦の8月ごろまで、多くの若い20歳代の方が地元紙に登場しました。

 危機を感じ、発言、行動する若者は増えています。

 琉球の伝統工芸の紅型(びんがた)に“降下してくる米兵の絵”を織り込んだ照屋勇賢(てるやゆうけん)という美術家や、地面の中から手が出てくる「土の人」などの作品がある山城知佳子(ちかこ)という映像作家ら、アーティスト、ミュージシャンは、沖縄戦も意識しているし、今の状況も意識している。だから自らの作品に、基地の島・沖縄のありようとかを織り込んでいるんです。

 県立芸術大学の学生が佐喜眞(さきま)美術館に所蔵される『丸木位里・丸木俊 沖縄戦の図 全14部』(本紙1785号参照)の映画の上映会を企画しました。県立芸大の今の学生さんたちも、そういう意識でやっているというのを、とても感じます。

 沖縄でも若い世代は、政治的なことや軍事的な問題とは、なんとなく距離は置いているんです。けれど、沖縄では歴史と現実、学校での平和学習とかの積み重ねが大きい。意識の中に埋め込まれているんですね。

 特に今年は、いろんな若い人たちが独自にいろんな活動をやっている。今回の大集会にも若い人たちがどんどん出てきた。波状的に広がる潜在的な力が今あるのかなという気がします。

シニアと若者が交流

 若い方々は「何も変わらないのでは? 成功体験がないので自信がない」と言います。シニアと若い世代の交流が必要です。それを若い世代は求めています。

 昨年末に、シニアと若い世代で率直に話し合う場を持ちました。その時初めてシニアの側は、若い世代が「シニアの人は若者の意見を聞こうとしない」と思っていることを知りました。若い世代も、「シニアの人は若者からの意見を待っている」ことを知りました。

 お互いをわかり合えたこの経験が、今回の集会の準備に活きてきました。

 戦争の危機を若い世代も感じ取っています。芸術、ラップ、カルチャーなどに運動の裾野を広げる必要があります。それは、その分野が得意な若者世代に好き勝手に担わせた方がいい。

 私は、若い人たちに「知ること、発言し行動すること」を伝えたいと心底から考えています。 (続く)





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