2023年12月22日 1802号

【命運尽きたか岸田政権/まやかしの経済対策にノー/軍拡のための大増税が見え見え】

 岸田政権が断末魔の様相を呈している。政権浮揚を狙った経済対策はまったくの不人気で、内閣支持率は20%台に急降下。そのうえ自民党の裏金疑惑が政権中枢を直撃した。岸田首相の命運は尽きた観があるが、軍拡・大増税路線も潰さないと意味がない。

支持率ついに2割台

 岸田内閣の支持率下落が止まらない。報道各社の11月世論調査は軒並み過去最低の数値を記録(朝日新聞25%、毎日新聞21%、読売新聞24%、時事通信21・3%、NHK29%など)。「毎日」の調査では不支持率が74%に達した。7割超えは麻生内閣時代の09年2月(73%)以来のことである。

 なぜ、こんなに不人気なのか。答えは簡単。政策が支持されていないからだ。特に「物価高から国民生活を守る」と銘打った総合経済対策(11/2閣議決定)の評判がすこぶる悪い。「読売」調査をみると、政府の経済対策を「評価しない」が66%で、「評価する」は23%にとどまった。

 経済対策に盛り込まれた所得税など4万円の定額減税については「評価しない」が61%(「評価する」は29%)。「評価しない」理由をみると、「選挙対策に見えるから」(44%)が最も高かった。「朝日」調査でも、政府が打ち出した減税と現金給付について「評価しない」が68%にのぼり、「評価する」28%を大きく上回った。

 世論の厳しい評価を受け、鈴木俊一財務相は「経済対策の意義、狙いが国民に十分に伝わっていない」と嘆いているようだ。寝言は寝て言えと言いたい。一度きりの減税や現金給付の後に、「軍拡増税」という恒久増税が控えていることを世の人びとはちゃんと見抜いているのである。

 いま最も求められている物価高対策は、直接物価を下げる効果がある消費税減税だ。「時事」の世論調査では約6割(57・7%)が消費税の減税に賛成している(反対」は22・3%)。自民党支持層でも賛成が48・2%を占めた。

 それなのに岸田文雄首相は消費税減税に目もくれないでいる。先日の国会答弁(11/1参院予算委員会)では「下げることは考えていないので、(減税の)効果についても考えていない」と言い切った。話を聞こうともしない態度が嫌われるのは当たり前だ。

財界の擁護も限度

 そんな岸田政権を財界は今のところかばい続けている。「なぜ、これで支持率が上向かないのか不思議だ」。経団連の十倉雅和会長は11月20日の会見でこう述べた。「防衛、GX(脱炭素化)、原子力、デフレからの完全脱却など、一つ一つの施策はいいことをやっている」というのだ。

 たしかに巨大企業からすれば、岸田政権は「いいこと」をやってきた。経済対策にしても、「賃上げの原資となる企業の稼ぐ力を強化する」として、大企業支援を拡充するメニューがずらりと並ぶ。財務省関係者が「(内部留保を)ため込んでいる大企業をそんなに優遇する必要があるんですかね」とぼやくほどだ(12/7TBSニュース)。

 とはいえ、尻尾を振るのがいくら上手でも実行力が伴わなければスポンサーに捨てられる。経団連は「消費税などの増税から逃げてはいけない」(十倉会長)と岸田政権に釘を刺している。増税を言い出せないほど弱体化した政権はいらない、ということだ。

 実際、政権延命に汲々とする岸田首相は軍事費増額のための増税に及び腰になっている。政府・与党も2025年度の増税開始を見送り、関連法案を通常国会に提出しない方向で調整に入った。財界や戦争勢力が三下り半を突きつける条件はそろっているのだ。

裏金疑惑も直撃

 自民党の5派閥が政治資金パーティーの収入を裏金化していた問題が連日メディアを騒がせている。最大派閥である安倍派は所属する議員に対し、販売収入のキックバック分は政治資金収支報告書に記載するなと指示していたという(12/9TBSニュース)。裏金作りを組織的に行ってきたことは明らかだ。

 裏金作り疑惑は政権や自民党の要職として岸田首相を支える安倍派5人衆を直撃。安倍派の事務総長を務め、直近5年間で1千万円を超える裏金を受け取っていたとされる松野博一官房長官ら5人が事実上の更迭に追い込まれた。

 東京地検特捜部は政治資金規正法違反での立件を視野に捜査を本格化させている。政府御用紙の読売新聞や産経新聞まで岸田政権の責任を厳しく追及し始めた。「もはや死に体」として見限ったと思われる。

 もちろん、岸田首相が退陣すれば一件落着という話ではない。内閣支持率急降下の根底には大軍拡・増税路線への怒りがある。この政策をやめさせることが喫緊の課題なのだ。 (M)

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