2023年12月29日 1803号

【議会を変える、市民と変える/京都府向日市議/杉谷伸夫/アリーナ誘致は市民の願う街か】

 向日(むこう)市は面積が約8平方km、西日本で一番面積の狭い市です。その中心近く、市役所の向かいに京都府営の競輪場があります。公営ギャンブルの長期低迷で、12年前には「廃止」方針が打ち出されていたのですが、コロナ禍でインターネット車券販売が激増して黒字となり、一転して存続方針に転換。京都府から「向日町競輪場再整備構想案」が出されました。

 今年6月議会で、市長がこの競輪場再整備で産み出される余剰地に、京都府が建設予定のアリーナ(大規模観客席のある体育館)を誘致すると突然表明。秋になって自民党の府議会議員が中心になって「向日町競輪場に1万人のアリーナを」と、誘致運動が始まりました。

 しかし、市内全域には一部を除き片側1車線の極めて狭い道路しか無く、大型バスは通れません。1万人もの人が来たら、大渋滞は必至です。案の定、10月に京都府が開催した「向日町競輪場再整備構想中間案」の住民説明会では、競輪場最盛期の周辺地域の大混雑やトラブルを知る住民から、住環境の悪化を懸念する声が続出しました。その一方で、市民の中には「スポーツ振興やまちの活性化につながる」と期待する声も多くあります。

 京都府がアリーナの候補地選定を急いでいることが伝わっていますが、多くの向日市民にとっては突然ふってわいた話です。地域と市民生活の今後に大きな影響があるため、市民が傍観者でいてはいけない、この問題についてみんなで考えようと、市民の皆さんの取り組みも始まりました。

 この問題は、私たちが住むまちをどんなまちにしたいのか、まちの方向性を問うものです。

 現在の市政は、長年「緑地保全地区」として保全されてきた農地を「用途転換地区」、「用途調整地区」に変更し、企業・商業施設等の誘致を急速に進めつつあります。税収を増やすことが主目的です。アリーナ誘致も「大型集客施設による経済効果」を主に期待してのものです。しかし向日市は、こじんまりとしたベッドタウンです。静かな定住都市の環境、価値を犠牲にして、経済効果を追求することが、多くの向日市民の願うまちの姿なのか。

 この問題を、そうした視点で市民の皆さんと一緒に考え、取り組んでゆきたいと思います。
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