2024年02月16日 1809号

【読書室/ガザとは何か パレスチナを知るための緊急講義/岡真理著 大和書房 1400円(税込1540円)/人間性の破壊を許さぬために】

 パレスチナのガザ地区に対するイスラエルの軍事侵攻が続いている。本書は昨年10月に行われた「ガザに関する緊急講演会」を書籍化したものである。「今起きていること」の本質と歴史的文脈を押さえるために必読の一冊だ。

 現代アラブ文学者で、パレスチナ問題に詳しい著者は、情勢を理解するためのポイントを4つ掲げている。1点目。ガザで起きていることはイスラエルによるジェノサイド(集団殺害)である。ガザに対する大規模な軍事攻撃は今回が初めてではない。入植者(ユダヤ人)が先住民(パレスチナ人)を追放するための植民地戦争が続いているとみるべきなのだ。

 2点目。日本の主要メディアの報道はパレスチナ・イスラエル問題の歴史的な文脈を「積極的に隠蔽」している。これはジェノサイドへの加担を意味する。その歴史的文脈が3点目だ。すなわち「イスラエルという国家が入植者による植民地国家であり、パレスチナ人に対するアパルトヘイト国家(特定の人種の至上主義に基づく、人種差別を基盤とする国家)である」という事実である。

 4点目は国際社会の二重基準だ。イスラエルがくり返してきた国際法違反、戦争犯罪がきちんと裁かれてこなかった。この不正義に、米国に追随する日本も加担してきたのである。

 著者は「ヒューマニティこそが、私たちの武器です。人間の側に、踏みとどまりましょう」と訴えている。「何人の人間性も否定されることのない世界」(これは日本国憲法の理想でもある)を目指すなら、パレスチナ民衆と連帯し、イスラエルの暴挙を今すぐやめさせねばならない。 (M)
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