2024年03月01日 1811号

【ガザ、ヨルダン川西岸でジェノサイド激化/民族浄化≠ノ突き進むイスラエル】

 パレスチナのガザ地区では4か月以上にわたる無差別殺戮(りく)が続いている。ヨルダン川西岸地区でもパレスチナ人の拘束・拷問、虐殺はエスカレートしている。イスラエルはパレスチナ全土を手に入れるため民族浄化≠ノ突き進んでいるのだ。

「停戦は妄想」

 ガザ地区の住民はイスラエル軍により南部への避難を強いられた。だが、その「生存者の最後の避難所」である南部ラファへの攻撃を公言している。「ハマスに完全勝利するまで戦争は終わらない」と語るネタニヤフ首相は「恒久停戦」の提案を「妄想だ」と一蹴。ガザ地区からパレスチナ人を消滅させることを狙っている。イスラエルの極右勢力はガザへの再入植を求める集会を開き、それに閣僚が参加(2/7日経新聞)。国際法違反行為を堂々と主張しているのだ。

 国際司法判所がジェノサイド防止・懲罰措置を命じた(1/26)直後、イスラエル政府はその命令に対抗するかのように、国連パレスチナ難民救済事業機関(UNRWA)がハマスの越境攻撃に協力したと言い出した。UNRWAは「イスラエル建国」で家や土地を奪われたパレスチナ人を保護するために1949年に設立された。職員約3万人。その中の12人が「ハマスとつながりがあった」とイスラエル政府は非難したのだ。

 イスラエルの「証拠書類」を検証した英国のスカイ・ニュースやチャンネル4など複数のマスコミが「裏付ける証拠は何もない」と指摘している(2/7TheIntercept)。イスラエルお得意のデマの可能性は高い。

 だが米国や日本など親イスラエル国政府は一斉にUNRWAへの活動資金拠出を止めた。このままでは「2月末までに全地域での活動が止まる」(2/1UNRWA事務局長)。ガザ地区にわずかに届いていた食糧・医薬品などが完全に断たれてしまう。紛れもないジェノサイドだ。資金を止めた政府は共犯者だ。

西岸も虐殺・破壊

 ガザ地区の人道危機が深刻さを増すのと同時に、イスラエルが軍事占領する東エルサレム、ヨルダン川西岸地区での虐殺もエスカレートしている。

 農作業をしていたパレスチナ人が撃ち殺されたり、脅されて避難している間に家屋が破壊されるなどの違法入植者やイスラエル兵による事件が頻発している。昨年10月7日から今年の2月1日までに限っても372人が殺された(2/3読売新聞)。家を失った人は昨年だけで1536人になる。

 西岸地区には、国際法違反の入植地が約290か所(政府公認は146か所)。入植者は70万人超(2/5毎日新聞)と急増している。国連人道問題調査事務所(OCHA)によれば、入植者による脅迫、窃盗、襲撃事件は1日平均3〜8件にもなる(11/2AFP)。イスラエル政府は昨年11月、1万丁の銃を入植者に配った。入植者は「ここはイスラエル領土だ。出ていけ」と叫び、パレスチナ人を襲撃しているのだ。

 パレスチナ政府のもとにある西岸地区だが、実際に自治が行われているのはわずか20%の面積に過ぎない。しかも地区全体が8bの分離壁に囲まれ、道路には検問所。パレスチナ人の街は封鎖も同然の状況にある。

 「罪状」も告げられず拘束されているパレスチナ人は今も6000人以上に及ぶ。これまで成人男性の40%は逮捕された経験があるという。西岸から約300万人のパレスチナ人を追い出すために、入植者の犯罪行為を容認しているのだ。

“ラファに手を出すな”

 イスラエル政府の蛮行を止める力はどこにあるのか。

 大統領予備選中の米国では、バイデン大統領が「入植者への制裁」を課す大統領令に署名した(2/1)。対象者はわずか4人だが、支持率の低下を気にした結果だ。オランダでは、イスラエルへのF35戦闘機部品の輸出禁止を求め市民が提訴。高等裁判所は「国際人道法違反行為に使用される危険性」を認め、7日以内に停止するようオランダ政府に命じた(2/12)。

 日本でもイスラエル軍事企業エルビットとの業務提携打ち切りを伊藤忠商事(2/5)と日本エヤークラフトサプライ(2/9)が相次いで決めた。市民のBDS(ボイコット・投資撤退・制裁)運動による圧力が効果をあげたのだ。

 イスラエルを国際法に従わせるにはネタニヤフ政権や極右政党の支持基盤を掘り崩す必要がある。ガザ攻撃はイスラエル経済を悪化させている。世界中からBDS運動を強めよう。

 ラファに手を出すな”世界同時行動を広げ、即時停戦、占領軍撤退、アパルトヘイト政策撤廃を迫ろう。

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