2024年03月01日 1811号

【ミリタリーウォッチング/「防衛装備移転3原則」の変更/武器輸出の大幅解禁は虐殺への加担だ】

 「死の商人」であることに後ろめたさを微塵も感じなくなったかのようだ。

 昨年12月22日、政府・自民党は、わずかなメンバーだけの密室協議で、「防衛装備移転3原則」をまたも変えた。名目が何であれ、その狙いは、武器生産企業の利益確保以外にない。

 政府は2014年、国是でもあった「武器輸出禁止3原則」を改悪し、「救難、輸送、警戒、監視、掃海」の5分野限定とはいえ、武器輸出に道を開く「防衛装備移転3原則」に変えた。この「限定」を取っ払おうということが今回の改悪の眼目である。

 武器輸出をめぐるルール変更の柱の一つが、「ライセンス生産品」(外国企業の設計図を使って製造する武器製品)の輸出ルールの大幅緩和・変更だ。従来は米国向けに部品だけの輸出を認めていたが、殺傷能力を持つ武器の完成品を含め、ライセンス元の国への輸出を全面解禁した。

 殺傷能力がある武器のライセンス元国から第三国への再輸出も、「現に戦闘が行われていると判断される国」以外なら可能とした。

 日本は、米国の地対空誘導弾や英国の81_迫撃砲、ドイツの155_りゅう弾砲など計8か国74品目をライセンス生産している。

 政府はライセンス完成品の第1号として、地対空誘導弾パトリオットミサイル(三菱重工業が主契約企業)を米国に輸出する。ウクライナやイスラエルに対し、米国が提供してきた武器の一つだ。日本製のパトリオットミサイルで米国の在庫が補充されれば、玉突き≠フ形でウクライナへの武器提供が実質的に行われたことになる。

 米国だけではない。ドイツもまた、ウクライナだけでなくイスラエルに武器を輸出している。こうして米国やドイツの備蓄を補うことでイスラエルへの武器輸出が活発化することになる。まさに虐殺への加担である。

 また、部品の輸出も可能になった。F16戦闘機のエンジンを生産しているのはIHI(旧・石川島播磨工業)だが、そのエンジンを組み込んだF16がイスラエルに輸出され、ガザへの空爆を行うかもしれない。

 さらに、日本、イギリス、イタリアによる共同開発中の「次期戦闘機」完成品の第三国への輸出も可能にするよう自民党は圧力をかけている。これも、国際法違反の無差別爆撃に加担する犯罪行為だ。

 まさにやりたい放題の感もあるが、これに抵抗する市民の運動もけっして小さくない。この間、イスラエル最大の軍需企業であるエルビット・システムズなどと業務提携してきた伊藤忠商事や日本エヤークラフトサプライが「協力終了」を発表せざるを得ない状況に追い込んだ。運動の勝利である。犯罪である武器輸出はとめなければならない。

豆多 敏紀
平和と生活をむすぶ会
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