2024年03月22日 1814号

【国際司法裁判所命令を無視 ガザ集団虐殺続く/イスラエル、支援国追いつめる闘いを】

 国際司法裁判所(ICJ)がイスラエルにジェノサイド(集団殺害)防止措置を命じてから1か月半。無差別虐殺は続いている。これを止めるには、多様な非暴力の闘いを組み合わせ、ネタニヤフ政権を孤立させることだ。虐殺に使われる武器の輸出を、戦闘機・戦車用燃料の輸出を止めよう。世界中の街からイスラエルとイスラエル支援国を糾弾し、即時停戦を実現しよう。

続くジェノサイド

 ガザ地区北部で2月29日、援助物資に殺到した住民100人以上が死亡した。住民は「動物用の餌を2か月間食べてきたが、それもなくなった。子どもたちのために小麦粉がほしかった」と語っている(3/1BBC)。イスラエル軍は支援物資の搬入妨害を続けている。限られた台数のトラックでは混乱が生じるのは想定されていた。軍は「威嚇」と称して住民を射殺した。集団的飢餓状態をつくり出した上での虐殺行為。まぎれもないジェノサイドだ。

 ICJから1か月以内に、実施したジェノサイド防止措置を報告するよう命じられたイスラエル。期限ぎりぎりで報告書を提出したが、内容は不明だ(2/26ロイター)。

 一層切迫するガザの状況に、南アフリカ政府は3月6日、ICJに対し1月26日の緊急措置を変更・強化するよう追加申請をした。イスラエルへの軍事作戦停止、封鎖解除などとともに、すべてのジェノサイド条約締約国に武力攻撃の支援をしてはならないことを求めている。

 ICJは南アの追加申請が指摘する「手遅れにならないよう」、すぐさま新たな緊急措置を命じるべきだ。すべての締約国政府はイスラエルに対する一切の支援を打ち切らねばならない。

武器・石油を止める

 イスラエルに武器を輸出している国はどこか。国連人権理事会の多くの特別報告者や独立専門家、作業部会が連名で出した声明(2/23)が、「米国とドイツは群を抜いてイスラエルへの最大の武器輸出国であり、出荷量は2023年10月7日以降増加している」と指摘している。あわせてフランス、英国、カナダ、オーストラリアが名指しされている。すべての国は「武器移転を通じて国際犯罪に加担してはならない。ガザでの容赦ない人道的惨事を早急に終わらせるために自分たちの役割を果たさなければならない」。

 声明はまた「武器輸出に関与した国家公務員は、戦争犯罪、人道に対する罪、大量虐殺行為を幇助(ほうじょ)・教唆(きょうさ)したとして個別に刑事責任を問われる可能性がある」と警告。イスラエルへの武器の生産と移転に関わっている企業や投資企業は、「人権、国際人道法、国際刑法を尊重する責任を負っている」と強調する。

 米国とともに非難されたドイツ。中米ニカラグア政府がジェノサイドに加担しているとICJに提訴(3/1)。武器輸出だけでなくUNRWA(パレスチナ難民救済事業機関)への資金拠出停止も問うている。UNRWAの活動を妨害する国がジェノサイドの罪に問われる意味は大きい。

 同じく武器輸出国と指摘されたカナダでは3月5日、カナダ国際人権弁護士会やパレスチナの人権団体などがカナダ政府の武器輸出は違法と自国の裁判所に訴えた(3/7WORLD BEYOND WAR)。

軍事企業を攻める

 直接行動も取り組まれている。カナダの軍事企業TTMテクノロジーズ(2/26)、クラーケン・ロボティクス(3/5)に対し、本社や事務所、工場前でピケを張り、出勤を阻止した。TTMは戦闘機F15、F16用の回路基板を製造、イスラエル最大の軍需企業エルビット・システムズに輸出している。クラーケンはソーナーシステムを提供している。

 武器が使えないよう燃料を止めることも有効だ。

 パレスチナ労働組合総連合(PGFTU)や環境団体、その他の機関・団体の連合体は、ジェノサイドとアパルトヘイト体制を終わらせるまで「エネルギー全面禁輸措置」を全世界に呼びかけた(2/26)。イスラエルのエネルギー流通を分析した戦術で、欧州にイスラエルからのガス輸入停止も要求している。

 イスラエルには国内産石油はほとんどなく、昨年は日量30万バレルの原油を輸入した(2/27ミドル・イースト・アイ)。最大の供給源はアゼルバイジャン。トルコの港から積みだされている。天然ガスはガザ沖合の海洋ガス田から得ている(8面参照)。2つのガス田の採掘権を持っているのがシェブロン。イスラエルの電力の70%にあたる供給源だ。BDS(ボイコット・投資撤退・制裁)運動のターゲット企業でもある。

 シェブロン本社がある米カリフォルニア州の製油所門前に約500人の市民が「イスラエルからの撤退」を求め抗議行動を行った(2/3)。シェブロンのガソリンスタンドのボイコットも取り組まれている。

政府・議会に圧力を

 こうした運動に呼応し、13か国、218人の国会議員が「武器禁輸」宣言に署名した(3/1)。取りまとめたのはプログレッシブ・インターナショナル(PI)。PIは欧州の民主主義運動(DiEM25)と米国サンダース研究所が呼びかけ、2020年に結成された国際組織で、DSA(アメリカ民主主義的社会主義者)など70近い政党、団体が加盟している。

 宣言署名者には米英、ドイツなどイスラエルに武器や部品を提供している国の国会議員が含まれ、「自国がイスラエルに武器を輸出するのを止めるため、それぞれの議会で直ちに共同行動をとる」ことを誓約した。

 PIは他の国際的団体とともに3月2日の国際行動デーを呼びかけ、数百万人の抗議行動につなげた。ボイコットに制裁、議会での行動、大衆的直接行動。パレスチナ解放という一つの目標に、多くの戦術を重ね合わせる必要があると呼びかける。

 宣言は、南アのアパルトヘイト体制を打ち破った指導者ネルソン・マンデラの言葉「成し遂げられるまでは不可能に見える」をひき、厳しいパレスチナの状況でも突然変化することに確信を持つことを訴えている。

  *  *  *

 イスラエルの軍事占領に対するハマス(イスラム抵抗運動)の攻撃は、イスラエルにガザ住民230万人に対する無差別攻撃の口実を与えただけだった。武装闘争では勝利できない。勝利するには、非暴力の闘いを駆使し、武力行使を封じ込める以外にない。3月はイスラエル・アパルトヘイト週間が続く。全世界でイスラエル政府、その支援国政府を追いつめよう。







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