2024年03月22日 1814号

【未来への責任(394)政府はILO勧告に従え】

 2月9日、ILO(国際労働機関)の条約勧告適用専門家委員会(以下、委員会)は、2024年報告書を公表した。

 委員会は強制労働条約(1932年日本批准)に関して、日本の「技能実習生プログラム」と「戦時性奴隷制と産業強制労働」を取り上げた。「産業強制労働」について言及したのは2016年以来8年ぶりだ。

 この報告では、「慰安婦」、「強制労働」問題について日本政府に以下のように述べている。

 「委員会は、第二次世界大戦中の『慰安婦』と産業強制労働の問題を解決するための具体的な措置が2018年以降、日本政府によって何ら行われていないことについて懸念をもって注目する」

 「本件の深刻さと被害が長期にわたっている性質を考慮し、委員会は日本政府に対し、生存する被害者、特に2015年合意を拒否した被害者との和解を達成するためにあらゆる努力を払うこと、また、年を追うごとにその数が減少し続けている戦時産業強制労働および軍事的性奴隷制による高齢の生存被害者の期待に応え、彼ら彼女らが求める解決を達成するために適切な措置を遅滞なく取るよう努めることを、要請する」

 委員会は、日本政府が2018年大法院判決を国際法違反だと言い、韓国政府が「第三者弁済」を提案したことも承知している。その上で、前記のような見解を示し、日本政府に勧告したのである。それは「慰安婦」、戦時産業強制労働が明々白々たる強制労働条約違反であるとの事実認定に揺るぎがないからである。生きている被害者がなお日本政府に権利、尊厳の回復を求めていることを知っているからである。

 委員会は、「本件の深刻さと被害が長期にわたっている性質を考慮し」と前置きしている。「慰安婦」問題で委員会が初めて意見を出したのは1996年。戦時産業強制労働について、強制労働条約違反と認定し日本政府に被害者救済を促す意見を出したのは1999年。以来、委員会は「慰安婦」問題については16回、産業強制労働については13回にわたって言及し、日本政府に「適切な措置」を求め続けてきた。委員会が日本政府に対し「いい加減にしろ」という思いを込めて今年の報告を書いたのは間違いないだろう。

 「どうする?日本政府」である。2018年大法院判決を「国際法違反」と口を極めて非難したが、国際法違反を続けているのは日本政府自身なのだ。韓国の強制動員訴訟で被害者原告勝訴の判決は積み上がっている。他方、「第三者弁済」は資金枯渇が懸念され、拒否する原告に強制できないことも明らかになっている。日本政府はILO勧告に従うときだ。

(強制連行・企業責任追及裁判全国ネットワーク 矢野秀喜)

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