2024年03月29日 1815号

【〈沖縄〉基地強化と闘う市民の直接行動/“戦争への道は開けない”】

 沖縄の辺野古新基地建設は新たな段階に入っている。反対運動もまた辺野古だけでなく、政府・防衛省の強硬姿勢に、平和を求めるより多くの人びとが抗議の意思表示をしている。「戦争への道を開けてはならない」―反戦平和、反基地の闘いを全世界と結んで広げる時だ。

工事中止命令を無視

 昨年12月、国土交通大臣が公有水面埋立法の許可権限を沖縄県知事から奪い、埋め立て工事を「承認」してから、沖縄防衛局はますます増長し、傍若無人にふるまっている。

 工事を行う時には、実施設計を県に示し、協議を行うことが条件となっている。工事が可能なのか、環境保全対策は十分なのかをチェックするためだ。

 ところが、沖縄防衛局は県からの再三の要請にもかかわらず、協議を行わないまま工事を強行。海上ヤード用の砕石投入時には粉塵が飛散した。汚濁防止のための洗浄を手抜きしていることが明らかになった。

 県は2度にわたり、工事中止命令をだしているが、沖縄防衛局はまったく無視している。民間企業がこんな対応をすれば、罰金が科せられ(公水法第40条、条件違反)、免許は取り消される可能性は高い。

 なぜ、沖縄防衛局は違法行為を平然と続けられるのか。咎(とが)める者がいないからだ。国交大臣の代執行「承認」は違法とする県の訴えを、最高裁判所は審理もせずに棄却した(2/29)。政府の言い分を丸のみし、国交大臣の屁理屈を検証しようともしない。

 国家権力の暴走を止めるのは、主権者しかいない。権力を監視すべきマスコミに正しく状況を伝えさせ、全国的な市民の抗議行動を巻き起こすことだ。

ミサイル搬入阻止行動

 沖縄では、まさに主権者として平和を、民主主義を守る直接行動が続いている。辺野古での基地建設反対行動は、怒りに満ち満ちて衰えることはない。

 さらに今、沖縄中部のうるま市で、陸上自衛隊勝連分屯地へのミサイル部隊配備、訓練場建設に反対する闘いが高まっている。

 防衛省は、与那国から石垣、宮古、鹿児島奄美の島々に配備するミサイル部隊の元締となる第7地対艦ミサイル連隊を勝連分屯地に増設する。使用する「12式地対艦誘導弾」は現在の射程距離は200`b程度だが、1000`bへの長距離化改造が進められている。地対艦ミサイルは中国大陸を射程に入れた地対地ミサイルになる。中国にとって脅威が増すことは明らかだ。真っ先に中国軍の標的となることも自明だ。

 これに対し、2022年11月「ミサイル配備から命を守るうるま市民の会」が結成され、反対運動を拡げてきた。3月10日には、中城湾港からのミサイル搬入車両19台を止める座り込み行動が行われた。自衛隊が道を開けるようアナウンスを繰り返すのに対し、市民は「ミサイル搬入は戦争に道を開く。平和を守るため道は開けない」と動じない。搬入車両は港から出るゲートを変えざるを得なかった。




訓練場白紙撤回≠

 同市石川では陸自訓練場建設が持ち上がっている。防衛省は那覇市に司令部を構える第15旅団を「師団に格上げ」、現在の約2500人から3000人に増強する予定だ。これに伴う「訓練場不足」を口実に、沖縄自動車道石川インター付近のゴルフ場跡地20fに目を付けた。24年度用地買収、26年度整備工事のスケジュールを立てている。

 2月になって初めて近隣2地区住民への説明会を開催した防衛省は「アクセスのしやすさ」「部隊の展開訓練」と説明した。実際、戦時になったらどのような使い方がされるのか。陸自も共同使用する米海兵隊キャンプ・ハンセン基地は沖縄自動車道金武インターに直結するゲートをつくった。軍隊の移動に自動車専用道はもってこいだ。住民の疑念は深まった。

 うるま市になる前の旧石川市域15自治会は全会一致で反対。市議会、県議会とも自民党議員も含め「白紙撤回」を表明している。基地反対運動とは距離を置く人びとも「反対」の声をあげた。住宅団地が隣接し、青少年の家からはゴルフ場跡地が見渡せる。住民の生活の場に問答無用と軍靴が踏み入ってくる。89歳になる女性は「あの沖縄戦を体験した私たちはね、闘いをあきらめるわけにはいかないのよ」(ノーモア沖縄戦命どぅ宝の会メルマガ227号)。

 沖縄での直接行動は、いわゆる活動家≠フ範囲を越えて広がりを見せている。それだけ、政府のやり方が横暴極まりない実態をさらけ出しているともいえる。

パレスチナとともに

 政府の言うことは信用できないことを沖縄では日々実感せざるを得ない。

 沖縄県基地対策課・辺野古新基地問題対策課がX(旧ツィッター)で発信しているのが嘉手納飛行場でのパラシュート降下訓練だ。区域外への降下など事故につながる危険な訓練であり、緊急時以外に行わない取り決めになっているにもかからわず、常態化している。昨年12月から4か月連続して実施され、その都度県は抗議文を送り付けているが聞く耳を持たない。

 3月11日には石垣港に米海軍ミサイル駆逐艦が寄港した。「非常時以外の民間港湾使用を自粛すべき」との県の要請に「休養と補給の定時寄港」と居直っている。接岸には水深不足であることを承知の上での使用通告だった。全日本港湾労働者組合(全港湾)は「職場と労働者の安全を守る」とストライキを決行。米艦は予定を切り上げて出港したが、日本政府と結託した民間施設の軍事利用(特定重要拠点)化へのデモンストレーションと見られている。3月14日、墜落事故原因も不明のまま、オスプレイの飛行が沖縄で始まった。

 辺野古新基地建設の新たな段階は、政府の横暴が際立つとともに、市民の怒りがより深く、より広がりを見せていることだ。この力を背景に、もう一度、埋め立て承認の撤回を行い、徹底して政府の不当性、違法性を暴きだすことが必要だ。当然、これまで以上の全国的な闘い抜きに、司法を正すことはできない。

  *  *  *

 イスラエル軍に完全包囲され、攻撃を受けているパレスチナ・ガザ地区の惨状を「明日の沖縄」(ノーモア沖縄戦の会)と受け止め、非戦の決意を固めている。別の視点から見れば、「今日の沖縄」をパレスチナに重ねることができる。

 パレスチナ人は人間とは扱われていない。ガザだけでなく、ヨルダン川西岸地区も、イスラエルにおいてもそうだ。自己決定権は奪われている。パレスチナ全体が植民地なのだ。

 沖縄はどうか。基地建設反対の民意は踏みにじられ、法の審理さえ受けられない。日本政府は不平等「地位協定」を改めるつもりはない。背景にある歴史を伝えないメディア報道はパレスチナも沖縄も共通している。「銃剣とブルドーザー」で奪われた土地は、ともに80年近く占領されたままだ。

 圧倒的な暴力にさらされながらなお、抵抗を続けるパレスチナ。政府の弾圧にも負けず、座り込みを続ける沖縄。新基地建設反対、軍事基地強化反対の闘いは、パレスチナと同質の植民地主義的支配からの解放闘争といえる。その勝利はともに全国、全世界の市民の闘いにかかっている。

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