2024年04月05日 1816号

【ガザ220万人を餓死≠ノ追い込むイスラエル/日米政府は「ハマス殲滅」作戦に加担するな】

 イスラエル軍の無差別殺戮が続くパレスチナ・ガザ地区。死者は4万人を超える(3/14現在)。その上、食糧が届かず150万人が食糧危機≠ノ直面している。このまま続けば、220万人全員が飢餓≠ノ陥る。一刻の猶予も許されない。米国ではイスラエル支援を続けるバイデン政権の足元を揺さぶる闘いが進んでいる。日本政府、企業に圧力をかけよう。3月「土地の日」から5月「ナクバ(大災厄)」へと、連続した闘いを集中しよう。

社会崩壊狙う

 ガザ地区で瓦礫の下に埋まったまま死亡し、名前が確認できない人は1万人近い。確認された死者と合わせ4万人を超える犠牲者が出ている(3/14Euro-Med Human Rights Monitor)。ネタニヤフ首相は、避難民を押し込んだ南部ラファへの攻撃を公然と口にし、大虐殺を重ねるつもりだ。

 北部では銃撃だけでなく、食糧を断ち、医療行為をさせないことで市民を死に追いやる作戦に出ている。わずかに残った医療機関、ガザ市のアル・シファ病院は3月17日夜から4日間連続して攻撃を受けた。医師や看護師を全員監禁、薬局も閉鎖、患者は死を待つ以外になくなる(3/22同サイト)。

 わずかに届く支援物資は「ガザ地区内の武器を持った暴力団が支配し、強者が弱者を食べる」実態が報道されている(3/16ネットマガジン『+972』)。この物資分配に秩序をもたらしていた警察責任者をイスラエル軍が殺害した(3/20Mondoweiss)。イスラエルは、救援事業を実行しているUNRWA(アンルワ)(国連パレスチナ難民救済事業機関)に言いがかりをつけ、活動資金を止めさせたり、140以上のUNRWA施設を攻撃している。救援体制を破壊し、パレスチナ社会を根底から崩壊させる意図があからさまになっている。

全人口が「飢餓」に

 「ガザではもはや飢餓の瀬戸際ではなく、飢餓の状態にある」。EUのジョセップ・ボレル外交安全保障上級代表はこう述べ、飢餓を武器にしているとイスラエルを批判した(3/18ロイター)。実際、既に数十人の子どもたちが餓死している。

 国連機関等が定めたIPC(総合的食料安全保障レベル分類)の報告書(3/18)によれば、5段階評価の最も厳しいフェーズ5「飢餓」の状態にあるのは68万人に達する。フェーズ3「食糧不安」以上の惨状に人口の95%があてはまる。

 報告書は4か月後の状況を想定。この状態が続くと、実に195万人がフェーズ5、4「食糧危機」の状況にいたり、すべての人が深刻な「食糧不安」に陥ると予測した。





 

 この「飢餓」の解決は難しいことではない。イスラエルが戦闘をやめ、物資輸送の妨害をしなければ改善できるのだ。UNRWAの活動資金を凍結している米国や日本が従来通り、拠出金支払いを再開すればいい。

 EUは3月からUNRWA資金の一部を拠出し始めた。カナダ議会はイスラエルへの武器売却停止動議を204対117で可決した(3/19ガーディアン)。各地での市民の闘いが、それぞれの国の政府に方針変更を迫っている成果だ。

バイデンは何をしたか

 問題は米政府だ。バイデン大統領は3月18日、ネタニヤフ首相と2回目の電話会談を行った。ラファ攻撃をやめるよう「圧力」をかけたかのように見せかけているが、ネタニヤフの方針は変わらない。バイデンは空や海から援助物資の輸送を表明しているが、問題はネタニヤフ政権の妨害行為・飢餓作戦なのだ。UNRWAの活動を保障することが先決だ。ところが米政府は25年3月までUNRWAへの資金拠出を凍結することを議会指導部と合意した(3/19ロイター)。

 バイデン政権は3月22日、国連安全保障理事会に「6週間の即時、持続的停戦」を提案したが、中国、ロシアが拒否権を発動、アルジェリアなどが反対、ガイアナが棄権した。米提案には「ラファ攻撃」を正当化する「ハマス=テロ殲滅(せんめつ)」が明示されていたからだ。この提案では戦闘は止まらない。

 バイデン政権は「停戦に努力している」「支援物資輸送に努力している」とのポーズを見せているが、アリバイ工作に過ぎない。現在行われている米大統領予備選挙で、イスラエル支持に抗議する批判票がバイデンを揺さぶっているからだ。

 民主党の大統領候補はバイデンで決まりと報じられている。だが本選は別だ。4年前トランプと争った接戦州で、再び勝利できるかどうかは微妙だ。たとえばアリゾナ州。前回トランプとは1万457票(0・31%)差の辛勝だった。今回アリゾナ州では「Vote Ceasefire AZ(停戦に投票を)」キャンペーンが取り組まれた。3月19日の投票結果は「停戦」を訴えた候補が1万5千票以上を獲得している(3/22現在)。この票を失えば、本選で勝てない。


DSAも「未決定」運動

 「予備選楽勝」のバイデンだが、各州で「Uncommitted(未決定)」票が増えている。州によって「未決定」の選択肢がない州もあるが、バイデン以外の候補者への投票を合わせると、現在、批判票は13%(通常は7%)に達する(3/19ニューヨークタイムス紙)。「未決定」割合の高いミネソタ州(批判票約28%)やミシガン州(批判票約18%)など、若年有権者の割合が高い地域ほど批判票は多い。

 同紙は、ミシガン州のアラブ系人口比率が高い地域(ディアボーン)で79%が「未決定」に投票と報じた。DSA(アメリカ民主主義的社会主義者)ミシガン支部は、このキャンペーンのなかで「パレスチナ連帯、ガザ停戦」を訴え、10万1449の「未決定」票を獲得するのに貢献した。前回の選挙でトランプとの票差は15万4千だ。他候補の票と合わせれば批判票は14万4千になる。勝敗を左右する票数だ。他の州でもDSAは「未決定」キャンペーンに取り組んでいる。「バイデンは方針を転換しない限りトランプに選挙で敗れる道をたどっている」(DSA全国選挙闘争委員会)。



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 パレスチナでは3月30日「土地の日」から5月15日「ナクバ(大災厄)」にかけ、入植者植民地主義に対する抗議行動が取り組まれる。

 1976年3月30日、北部ガリレヤ地方のパレスチナ人所有地をイスラエル軍が強奪。抗議行動に立ち上がったパレスチナ人6人が射殺された。これ以来、占領地やイスラエル国内、周辺国への避難民もあわせパレスチナ人の統一行動日となっている。

 2018年にはガザ地区で帰還権を求める大規模な平和行進が取り組まれた。行動は1日では終わらず、イスラエル建国の5月15日、パレスチナにとっての「ナクバ」まで続くものだった。3月のイスラエル・アパルトヘイト週間に続く、「土地の日」から「ナクバ」にかけ、行動を集中しよう。

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