2024年04月05日 1816号
【地方自治法改悪案を国会提出/自治体への不当な介入を法定/国の下請け機関化を許さない】
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政府は3月1日、地方自治法「改正」案(以下、法案)を国会に提出した。法案は第33次地方制度調査会答申(以下、答申)を受け、政府の自治体への不当な介入を「法定」するもので、憲法の規定する地方自治を侵害するものだ。また、自治体での対面窓口廃止促進につながる規定の創設もあり、断じて認められない。
災害 コロナを口実
法案は、「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態における特例」として、政府の自治体に対する「補充的な指示」を閣議決定を経て出す「指示権」や自治体相互間の「応援の要求・指示、職員派遣のあっせん」を政府が行う「職員動員権」などの制度を創設する内容だ。
これについて、答申では、大規模な災害や感染症などで十分な対応が取れなかったことを事例に挙げ、想定外の事態が発生した場合に備えるとしている。
しかし、答申が指摘するコロナによる死者の増大や自治体間調整ができず保健所の対応が遅れたという事態は、政府がPCR検査を抑制し臨時病院など医療の拡充をせず、自己責任の棄民政策を行なったためである。保健所の対応力不足は、1992年の852か所から2020年469か所へと保健所を半減するなど施設も職員も大幅に減らしてきたことが原因だ。命令直下、人員を融通していたら解決できたというたぐいの事態ではなかった。
東日本大震災や熊本地震での救助や復旧が遅れたのは、90年代半ばから政府の地方行革の名の下で約20年間で55万人もの自治体正規職員が削減されたことによる自治体の防災対応力の低下が原因である。今回の能登半島地震でも繰り返されている「人手が足りない」「物資を届けられない」はその表れだ。政府の「強力な指示」があったとしても、それに応えられないのが自治体の現状なのだ。
緊急事態条項の露払い
新たに創設しようとしている「国の指示権」は、政府が自らの無策と失政を逆手にとって、国と自治体が対等・協力の関係にあるとして機関委任事務を廃止し国の関与を制限した地方分権改革の理念に逆行するものだ。
答申では「大規模な災害や感染症」を例示しているが、法案は「指示権」「職員動員権」ともに「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態が発生し、又は発生するおそれがある場合」「地域の状況その他の当該事態に関する状況を勘案して」など曖昧な要件で指示権を認め、「緊急性」の要件を外している。これでは、災害や感染症に限らず、基地建設・強化や原発再稼働、有事の際の動員など戦争国家とグローバル資本の利益のために恣意的に濫用されるであろうことは想像に難くない。
さらに、岸田政権が今年から条文の議論に踏み込むとしている「緊急事態条項」創設改憲の露払いになるしろものであり、認めるわけにはいかない。
対面窓口廃止を推進
また、答申では自治体のDX(デジタルトランスフォーメーション)による業務改革の最重点に「対面による紙の申請から非対面のオンラインにシフト」を挙げた。法案では、「情報システム利用の原則」に「国と協力しその利用の最適化を図る」旨の義務が明記された。自治体の基幹20業務の国基準化とマイナンバーカードの徹底活用で対面窓口廃止を推進するもので、対応できない市民は置き去りになり「市民生活を守る窓口業務」は縮小され、一層の職員リストラが進む。
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この答申に対しては、昨年末に「極めて限定的かつ厳格な制度にすべき」(全国市長会会長)「(非常事態対応は)個別法またはその改正等で行われるべき」(全国町村会長)との懸念や要望が発せられている。
沖縄・辺野古新基地建設での史上初の代執行強行に続き、自治体の「国の下請け機関化」につながる地方自治法の改悪に反対しよう。
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