2024年04月05日 1816号

【ミリタリー/新たな戦前≠準備/自衛隊の組織的靖国参拝】

 「靖国問題」に関する研究で少なくない識者が「靖国神社は戦死の悲しみや痛みを共有する追悼施設ではない」「戦死者を『国のために死んだ名誉の死者』と美化する顕彰施設なのである」と規定する。

 戦後、「顕彰施設」としての「靖国」の役割は否定され国家とは分離したはずだったが、政府要人による参拝や自民党など議員による集団参拝が繰り返され、「顕彰施設」としての靖国神社のかつての役割が復活、強められてきた。

 最近では、旧日本軍と「断絶」したはずの自衛隊が「靖国」との一体化の動きを強めている。新たな戦前≠ニ軌を一にした動きで見過ごすことはできない。

 1月9日、陸上自衛隊の小林弘樹陸上幕僚副長など「航空事故調査委員会」の幹部ら数十人が靖国神社を参拝した。年始の「航空安全祈願」であり「私的」と言い訳しているが、「委員会」は今回、「実施計画」を作成しており、組織的な行動だったことは明らかだ。

 「参加者の一部が公用車で神社を訪れたことも確認されている」「防衛省の調査に参加者は『私人として参拝した』と説明しているというが、毎日新聞記者が現地でその様子を確認すると、幹部に対して周囲が仰々しく接している姿が印象的で、組織として活動しているようにしか見えなかった」との報道もある。

 続いて、翌10日には陸上自衛隊宮古島駐屯地トップの比嘉隼人宮古警備隊長(1等陸佐)ら幹部隊員約20人が、制服を着て公用車(部隊のマイクロバス)を使い、宮古神社に参拝している。防衛省は1974年の事務次官通達で「神祠(しんし 神を祭るほこら)、仏堂その他宗教上の礼拝所に対して部隊参拝すること及び隊員に参加を強制することは厳に慎むべきである」と示しているが、「行政の通達など知ったものか」とばかりの、かつての軍部の暴走を想起させる行為である。

 もちろん、今年の自衛隊の「靖国」参拝は突然ではない。多くの「実績」の延長線上にある。

 例えば、新たな戦前≠フ主戦場とされることが濃厚な沖縄島では、陸自第15旅団(那覇)の旅団長らが例年6月23日の慰霊の日に制服で黎明之塔(自決した日本軍第32軍の牛島満司令官、参謀長の長勇(ちょういさむ)中将を弔うため、建立したとされる)を「参拝」してきた。これは2004年から実施され、陸上幕僚監部が部内で旅団長の「参拝」に関する報告文書を作成していたことが判明し、問題となった2022年のみ見送られている。

 新たな戦前≠周到に整備するこれら自衛隊の確信犯的な動きに最大限の警戒と抗議が必要だ。

豆多 敏紀
平和と生活をむすぶ会

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