2024年04月12日 1817号

【安保理停戦決議 孤立深めるイスラエル/即時停戦せよ 支援妨害するな】

 イスラエルによるジェノサイドに世界各地で抗議行動が巻き起こる中で、国連安全保障理事会、国際司法裁判所(ICJ)が相次いでイスラエルの責任を問う決議や命令を出した。さらに国連人権理事会には、特別報告者が「ジェノサイド」「植民地主義」と断じる報告書が出ている。

 国連機関から非難を浴び、孤立するイスラエル。国際的な行動をさらに強め、ネタニヤフ政権に「決議」や「命令」に従わせ、民族浄化≠フ野望を断念させる時だ。アパルトヘイト体制の解消へと歩を進めよう。

初の「停戦決議」

 国連安保理は3月25日、昨年10月の戦闘以来初となる「停戦決議」をあげた。日本を含む非常任理事国10か国が共同提案し、米国以外の14か国がすべて賛成。イスラム教のラマダン(断食月)期間中の即時停戦、人質全員の無条件即時解放、人道支援の拡大などを当事者に求めた。

 決議はラマダンから「永続的・持続可能な停戦」へつながることを要求しているが、もともとの提案は「恒久的停戦」だった。米政府が最後まで抵抗し、あいまいな表現に修正された。

 この他にも、決議には弱点がある。「人質全員の解放」としながら、イスラエルが不法に拘禁し、拷問を繰り返しているパレスチナ人数千人については、「国際法上の義務の遵守」を求めるにとどまっている。「人道支援」についても「人道支援提供の障壁撤廃の必要性をあらためて強調する」と極めてひかえめな表現になっている。

 米政府はこの譲歩案に拒否権を使うことはできず「棄権」した。国内世論の反発を気にしたからだ。イスラエル政府は米政府を「これまでの政策の放棄だ」と猛反発した。この停戦決議の採択がイスラエルにとっていかに大きなダメージであるかを示している。

「ジェノサイド」と報告

 米政府は「決議に法的拘束力はない」とイスラエルに助け舟を出した。国連加盟国は「安保理決議の履行に同意」(国連憲章25条)していることを都合よく忘れるのだ。イスラエルも米国も停戦、人道支援に背を向けることなど許されない。

 安保理決議の2日前、人権理事会に「ジェノサイドの分析」と題する報告書が提出されている。フランチェスカ・アルバネーゼ(1967年以来の被占領地パレスチナの人権状況に関する特別報告者)が、イスラエルの暴力パターンと政策を分析し、ジェノサイドだと結論付けたものだ。

 特に、「ガザでのジェノサイドは、70年以上にわたる入植者による植民地的抹殺プロセスがエスカレートした段階」との認識を示したのは重要だ。ジェノサイドはイスラエル建国、入植活動による民族浄化に端を発しているということだ。

 報告書はイスラエルとともに、それに加担した国の責任を問い、パレスチナに対する賠償金支払いの義務があると指摘し、7項目の勧告を行った。その中に、国連総会で対アパルトヘイト特別委員会を設置し、包括的な解決策を策定するとの提案がある。南アフリカのアパルトヘイト解消を成功させた歴史的教訓に学び、パレスチナ人に対する人種差別解消こそが根本的解決であることを示すものとして注目すべき点だ。

輸送保障を再命令

 南ア政府からの追加提訴を受けたICJは3月28日、「ガザ地区の生活環境はさらに悪化し、すでに飢饉が始まっている」とし、イスラエルに対し、人道支援がガザ地区全体に確実に届くよう、搬入ルートの拡大などあらゆる措置を講じることを命じた。イスラエルは1月のICJ命令を無視しジェノサイドを続けている。訴訟の当事者である南ア政府は国連憲章第94条2項に基づき、ICJ命令に従わないイスラエルを安保理に訴え、勧告を求めている。人権理事会の特別報告者も南アのこの訴えに支持を表明している。

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 米国JVP(平和を求めるユダヤ人の声)のフィリス・ベニス全国委員は「この安保理決議は国連が世界的なBDS(ボイコット、投資撤退、制裁)運動に加わるきっかけになるかもしれない」(3/25コモン・ドリーム)と安保理決議を「不十分だが始まりになる」と評価している。

 ネタニヤフ政権とその最大の擁護者であるバイデン政権の国際的な孤立は深まっている。南アのアパルトヘイトを終わらせたように、世界的な闘いのさらなる広がりが必要だ。各国政府に停戦決議を守れ、ICJ命令を履行せよと迫ろう。



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