2024年04月12日 1817号

【ドクター 患者に利益(安全・効果)の明白な後発品の確保を】

 医療現場では、本当に必要な医薬品である、膀胱(ぼうこう)炎や肺炎に使う抗生物質、喘息(ぜんそく)の急性期に使う薬、花粉症やじんましんへの抗ヒスタミン剤など、治療に欠かせない薬の入手困難が続いています。その多くが、先発医薬品(新薬)の特許が切れた後にほぼ同じ有効成分・効能・効果で主に中小企業で作られている後発品(ジェネリック)です。

 昨年末の厚生労働省調査では、「限定出荷・供給停止」が全後発品の26%にもなっています。不足の直接の原因は、多くの後発品製造企業が製造等での不正のため、業務改善や停止命令を受けるなどで製造が止まっているからです。

 この背景には、政府が「骨太の方針2015」で安い後発品を80%にする計画を立て、22年に79%を達成する一方、後発品の値段を下げ続け17年から22年には5%も下げました。後発薬会社の利益は減り、コスト削減から不正につながった、とNHKでさえ報道しています。後発品の企業がまともな経営をできるよう、直ちに予算措置などを講じる必要があります。

 この件でマスコミが触れない最も重要な点は、充実すべき後発品は患者にとって本当に役立つ物であるべきだということ。後発品にも役に立たないものが大変多いのです。その昔の日本の薬の認可方法は実にいい加減でした。私たち医療問題研究会などの学会活動やそのマスコミ報道もあり、90年代後半改善されました。しかし、旧来の方法で評価されたものが今も多数残っていますし、評価されないままのものもあります。まず、後発品の中で世界的に有効性が確認されている医薬品を確保すべきで、他は評価し直すべきです。

 他方で、最近開発の「新薬」はもっと要注意です。例えば、抗コロナ薬ゾコーバは科学的な評価では効果を全く証明できなかったのに強引に認可され、なんと200万人分を政府が買い取っています。しかも一人当たり5万円強の高薬価です。この費用を1千億円とすると、すべての後発品の約1か月分に当たります。異常に高価だが効果・安全性に問題のある抗がん剤オプジーボや認知症薬レカネマブなど、いま製薬大企業は患者のためではなく、利益優先の不当に高額な医薬品(「新薬」)販売をめざしています。そのような「新薬」よりも、本当に効果のあるジェネリックの充実こそが患者のための緊急課題です。

  (筆者は小児科医)
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