2024年04月12日 1817号

【みるよむ(691)2024年3月30日配信/宗教支配下の女性差別/シェルターでも虐待、人権侵害】

 イラクでは、イスラム主義支配の下、女性の移動の自由は制限され、女性シェルターでも人権侵害がはびこっている。2024年1月、サナテレビはこの問題を取り上げた。

 レポーターは、イラク国内で女性がホテルに宿泊するには「家族に連絡を取って了解を得るか、その女性が働いている機関からの正式な書簡が必要だ」と言う。世界のどの国でも、「移動の自由」は基本的人権として当然認められている。しかし、占領以来、イスラム政治勢力の支配が強まる中で、女性に対する差別と人権侵害は深刻になっている。

 女性が家族から離れての一人暮らしを望んでも、家族の許可がなければホテルでの宿泊も住居の賃貸も断られる。家族からの虐待にあった女性は、女性を保護するシェルターに頼るしかない。ところが、そのシェルターで「少女たちは脅迫、殴打、侮辱にさらされている。警備員からセクハラを受け、性的搾取を受けた」という。その実態をサナテレビは告発している。

 そうしたシェルターでは行政当局が何の対応もしないこともあり、「自殺が増え、精神的な病気も増え…ついには集団自殺にまで発展する」という悲惨な状況だ。このシェルターの名称は「ホームレス女性のための家」。「生涯にわたってつきまとう汚名」とも言うべきものだ。

女性デーで差別を批判

 3月8日の国際女性デー集会では、NGOがシェルターを開くことが許されない実態への批判の声が上がる。サナテレビ創設者のひとり、女性の権利獲得の活動家のナディア・マフムードさんも登場する。

 イラクでの女性に対する差別と人権侵害は、自ら命を絶つ痛ましい事件まで引き起こしている。サナテレビはこの実態を明らかにし、女性の人権と生活が守られる社会をつくるために立ち上がろうと訴えている。

(イラク平和テレビ局in Japan代表・森文洋)

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