2024年04月19日 1818号

【16の空港・港湾を軍事施設に指定/自衛隊・米軍の使用が自由に/“戦争協力しない”自治体の決意を】

 政府は戦争準備のピッチを上げている。民生用の空港、港湾施設を自衛隊や米軍などがいつでも使用できるように改造することを始める。沖縄から北海道まで、軍隊の移動、軍事物資の輸送を可能にするためだ。戦争する国づくり≠どこで止めるか。その攻防は自治体で始まっている。地方自治法改悪もその一つだ。地域から軍事化阻止の闘いを強化しよう。

軍事仕様に改造

 政府は4月1日、7道県16の公共施設を「特定利用空港・港湾」に指定した。2022年12月に改定した軍事(安保関連)3文書の一つ、「国家安全保障戦略」に基づき設けられた「総合的な防衛体制の強化に資する研究開発及び公共インフラ整備に関する関係閣僚会議」の決定だ。閣議でもない。担当大臣間の合意で、軍事転用という重大事が決められてしまうのだ。

 指定施設は「自衛隊や海上保安庁が訓練等で利用でき、部隊の展開や災害時の対応に資する」ように整備するという(4/1林芳正官房長官記者会見)。米軍の利用も想定される。戦時だけでなく普段から日常的に軍隊が使用するというのだ。

 指定されたのは、沖縄那覇空港など5空港と石垣港はじめ11港湾、あわせて7道県16か所。指定された空港では大型輸送機や戦闘機の使用に合わせ滑走路を延長したり、重量に耐えられるよう強度を高める工事などが計画される。港湾では大型輸送艦などのために岸壁の拡張、水深掘り下げなどが行われる。

 たとえば石垣港。港湾法で「重要港湾」と位置付けられ、7万d級のクルーズ船が接岸できるバースを有するが、3月に入港を強行しようとした米ミサイル駆逐艦「ラファエル・ペラルタ」は1万d級ながら、水深不足で接岸の許可は得られず、沖合に停泊した。軍艦の利用には掘り下げが必要ということだ。

「円滑利用」で制限なし

 石垣港の管理者は石垣市。中山義隆市長は今回の指定により、現行の整備計画(26年完了予定)が「新たな予算が付けられ前倒しで進む」と歓迎した。軍港化すれば攻撃目標になるのではないかとの指摘に、「今でも有事やグレーゾーンの際には自衛隊や米軍が使う。攻撃対象になることに関して差はない」と指定に伴うデメリットはないと言い切っている(4/2八重山毎日新聞)。

 インフラ整備の予算が増えるなら、軍事拠点だろうが構わない。政府のシナリオ通りの応答だと言える。軍事利用に二の足を踏む他の自治体に聞かせようという魂胆だ。

 今年度予算には「防衛体制の強化に資する公共インフラ整備費」として、5空港で222億円、11港湾で148億円、計370億円が計上されている。防衛省の軍事費とは別枠で、国土交通省が執行する。

 

 政府は昨年、10道県32か所を「特定重要拠点」候補にあげていた。指定するには、施設管理者と「円滑な利用に関する枠組み」について合意することが前提になっている。利用調整を「その都度」ではなく、「あらかじめ」行うことで、いつでも軍事優先の使用を認めさせようというのだ。12か所の施設が候補に上がっていた沖縄県は、昨年12月「不明な点が多く残されている」と指定に同意しなかった。結局、沖縄では国が管理者である那覇空港と石垣市が管理者である石垣港の指定しかできなかった。

 地元自治体がインフラ整備予算と引き換えに軍事利用を受け入れるかどうか。踏み絵になっているのだ。

問われる非戦の決意

 1950年に制定された港湾法は国が港湾管理者となることを認めていない。「国際戦略港湾」や「国際拠点港湾」とされるものも、管理者は地方自治体となる。「港湾計画」を立て、接岸の許可権限を持っているのが管理者であり、港湾施設の使用料も徴収できる。

 この仕組みは、戦前のように港湾を国家管理にすると容易に軍事利用できることを懸念した連合国軍最高司令官総司部(GHQ)が「対日民主化政策」の一つとして指示したことが背景にある。一方、GHQの占領政策が「日本再軍備」に転換した後の56年制定の空港法は、5つの国際空港の他、23の拠点空港が国土交通大臣を管理者としている。その違いは大きい。

 港湾の自治体管理の考え方を真っ向から否定したのが、軍事3文書改定にむけ設置された「国力としての防衛力を総合的に考える有識者会議」である。22年11月に出した報告書は「縦割りを打破した総合的な防衛体制」を掲げ、「公共インフラ投資を促進していくため、防衛省・自衛隊や海上保安庁のニーズを反映する枠組みを構築すべき」としている。これが「特定重要拠点」候補地となり、今回「特定利用空港・港湾」として指定にいたった。

 自治体は今「戦争に協力するのか、しないのか」が問われている。石垣市のように積極的に軍仕様の整備に応じるのか、沖縄県のように軍事利用に同意しない姿勢を貫くのか、自治体のあり様が問われている。

 しかも軍事拠点化は沖縄に限られた問題ではない。昨年政府があげた特定重要拠点候補にはなかった北九州空港(管理者は国)や須崎港(管理者は高知県)が指定された。政府は今後も指定施設を広げるつもりだ。

 ひとたび戦端が開かれれば、日本列島すべてが攻撃目標とされる。「平時から備える」ことなどあってはならない。戦争を引き起こさないための、努力と備え(善隣外交)にこそ、全力をつくすべきである。

  *  *  *  

 政府は、「国民の安全に重大な影響を及ぼす事態が発生し、又は発生するおそれがある場合」、自治体に対し政府が指揮権、職員動員権を発動できるよう地方自治法改悪案を国会に提出している(本紙1816号既報)。まさしく、「有事」には自治体を手足のように使い、戦時体制を敷こうとするものだ。自衛隊が「平時」から軍事演習を重ねるように、自治体にも政府の指示に従う「訓練」を強いるだろう。

 政府は辺野古新基地建設で沖縄県知事の公有水面埋立法の許可権限を奪う「代執行」の前例を作った。これ以上、自治権を踏みにじらせてはならない。平和と民主主義を支えるものでもあるからだ。

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